Chapter02-05

記録者: ダミアン・ガルーナ (ENo. 145)
Version: 2 | 確定日時: 2025-11-30 04:00:00

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「ねえ──じゃあさ」

ぱちん。
少年が指を鳴らす。
軽快なくせに、不思議と胸の奥をざらつかせる音がした。

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「“正しい”があるなら……“悪い”って、なんだと思う?

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「君の思う“悪さ”ってさ。どういう形をしてる?
 ……悪い人って、どうして悪い事をすると思う?」

その声は明るいのに、奥底に沈むものは冷たく澄んでいる。
冗談みたいな口ぶりなのに──その実、返答を逃す隙を与えないほど見つめていた。

──あなたは、何をもって“悪い”と判断しますか?


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「僕が新しい曲を吹こうとするとね、
 止めようとする人がいるんだ。すっごく真面目な顔してさ」

笛に指を当て、吹く真似をして。
けれども笛を通して音を出す事はしないで、
また手持ち無沙汰のように笛を手でいじる。

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「親も、偉そうな大人も、見回りの憲兵も、
 神様の言うことばっかり唱える聖職者もね。

 彼らはそれを“正しいこと”だって僕に言うんだよ。
 でもさ、僕の新しい音を止めるんだよ? それってさ──」

そうして。歌う様な声で嗤った。

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〝悪い〟ってことじゃない?

      ──だって僕の方が正しいのだから!

……少年はあなたを見ている。
Answer
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「今度は悪い、かぁ」

首を反対へ大きくひねり、ううんと唸り声を上げる。うう、とかああ、とか、しばらくうめき声を上げた後、ぽつぽつと話し出すだろう。

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「俺の村では昔から、悪いやつって言えば人狼だったんだよね。狼男、ってやつ。俺の村にはたまにそれが生まれて、そいつが悪さをするから村が貧乏なんだ、って言われてた。」

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「んで、俺はその人狼だったんだよね。その村で言う人狼って話なんだけど。人狼ってバレたら殺されるかも知れないから、内緒にしてたし今でもしてるんだけどね」

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「そう、俺の村、人狼だったら最悪殺されるかも知れないんだ。まだ何もしてない赤ん坊でも。何もしてない赤ん坊のうちに。なぁ、そんなの『悪いやつ』のやることじゃね?」

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「でも、俺の村の人達が悪いやつなのかって言うとそうじゃなくて。全然普通なんだ。人狼の赤ん坊は殺すかも知れなくても、そうじゃないと思ってる俺にはお菓子を分けてくれたり、暗い夜は危ないから早く家に帰れって送ってくれたり、普通にみんないい人なんだ」

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「俺だって、そんな村に悪さをしようなんて思ったことはないよ。いや思ったことがないことはないけど、やったことはないよ。だってやったらホントに悪い人狼になっちゃうじゃん」

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「えっと、だから、悪いことをするやつも、悪いことしてないときはいい人だったりするし、いい人だって自分が危なくなりそうなとき悪いことをしたりするんだ。だれでも悪いやつだし、誰もみんないい人なんじゃないかなって俺は思ってるんだよね」

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「で、結局いい奴よりなのか、普通なのか、悪いやつ寄りなのか、みたいな感じだったら、俺はいい奴寄りになりたいな~と思ってるかな」