Chapter01-05

記録者: 空木 颯斗 (ENo. 59)
Version: 1 | 確定日時: 2025-11-27 04:00:01

クリックで開閉

  ──カシャ


シャッターの音の後、あなたを向いていたレンズがふと向きを変える。
何か未知のことを認識した様子で、その後にまたあなたにひとみが向いた。

icon
「観察対象、最終質問を提示します」


この対話の終端が近いようだ。
不思議な白い部屋での対話は、何の説明もなく始まり、そして終わるらしい。

奇妙な観察者は感慨もなく告げ、一拍。

icon
──あなたは、何をもって“自らの存在に価値がある”と判断しますか?


icon
「それは役割でも、使命でも、功績でも構いません。
 また、価値は不要であるとする見解も有益な観測結果となります。

 あなた自身が、どの基準で己を“肯定”し、
 何をもって“無価値”とせずにいられるのか。

 その価値に他者を如何にして組み込んでいるのか、
 その内的構造を、開示してください」


──あなたは自らに〝どのような価値〟があると認識していますか?

 
icon
「当機は、あなたの答えを推論する事はできても──
 代弁する事はできません
 故に此度は、 あなた自身の言葉で語られることを要求します」
Answer
icon
「あ~はいはいはい……そういう系でござるね?
 僕ァ特段自分に価値を感じないタチではあるんでござるが……」

icon
「与えられた価値については正しく認識しているつもりではあるでござる。
 自分は誰かにとっての何か・・・・・・・・・であり、何かにとっての誰か・・・・・・・・・であるし、
 そう定められ、そう在れと思われている内はそう在ろうとも思う」

icon
「だから、そう思っている内は自分に貼られているラベルを肯定する事は出来る。
 愛おしく思うし、守ろうとも思える。
 僕が無価値になる時は、その一切が消えうせる時ではないか、と」


icon
「与えられた識別番号、僕が刻まれた記憶や記録、僕に注がれた感情や言葉……」
「僕が望んで与えられたものであれ、……そうでないにしろ」

icon
『僕は誰かが観測した僕という存在の観測結果の連続である』と僕は思ってるでござるからね。
 貴方みたいに僕を観るモノが居続けるなら僕の価値もまた、生まれ続けるのかも」

少年のレンズが貴方のレンズを覗く。
これの瞳は部屋の照明を素直に跳ね返すようであり、内側から光が滲むようでもあった。



icon
「なんだよ冗談の一つでも言いなよオートマタ。
 ここで『星みたいだな』とか言えない内はまだまだでござるなあ! あ~~っはっはっは!」



icon
「……嘘だよ。はい、回答終わり」