Chapter01-01

記録者: プレイフル (ENo. 63)
Version: 1 | 確定日時: 2025-11-27 04:00:00

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あなたがふと気が付けば、真っ白な部屋に居た。
そこには椅子がひとつ置いてあるだけで、他に何もない。

あなたがその椅子に、座ったとき
あなたは視界の“先”に、誰かがいることに気が付いた。
白い部屋のなか、白い椅子に誰かが、座っていた。


  ──カシャ


何かが擦れるような、もしくは閉じるような音。
その音は対面の椅子から聴こえてくる。

それは────人物と解釈は出来はするだろう。

腕が二本あり、脚が二本ある。
それなりに体格の良さそうな身体に──無機質な四角いかたちが、乗っている。
あなたにその知識があるならば、それはカメラのように見えるだろう。
艶やかなレンズがじっとあなたを見詰めるように据えられていた。


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「……」


……そうしてその状態のまま、暫く。
沈黙に耐えかねてか、将又訝しんでか、あなたが口を開こうとした時、
もしくは、十分すぎる時間が経った後に、声がする。

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「……あなたは私を観測可能ですか?」

男性的な声だ。決して被り物の様にくぐもった声はせず、妙に鮮明な音色。
どこか奇妙な言い回しの後、まるで咳払いをするように、
人であれば口元に当たるだろう所に軽く手を添えて、
それから改まって一つ礼をした。

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「先ほどは不躾に見つめてしまい申し訳ありません。
 状況を把握するため暫し観察を行っておりました」

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「当機は此の場所について説明をすることが不可能です。
 この部屋についての事前情報はインストールされておりません。
 再起動した時にはこの部屋に在りました」


……即ち、この者もまたこの部屋に居る理由を知らないという事だろう。
彼方もまた、この部屋に呼ばれた者の一人……ひとつであるようだ。
現状を確認するようにレンズを左右に向けたソレは、しまいには改まってあなたにレンズを向け直す。
ピントを合わせるようにレンズがくるりと回り、それから頷くように一つ頭を揺らした。

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「観察対象、まずはあなたという存在を記録するための
 初期照合を致します」

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「あなたの識別情報を教えてください。──名前、呼称、あるいはそう呼ばれる理由を」

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「あなたを“あなた”と定義する特徴を」




──あなたは得体の知れない観察者に、どのような自己紹介をしますか?


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「──失礼致しました。まずは当機から情報を開示すべきでしたね」

きゅり、とレンズがまた周り、一拍の間。
まくしたてる事は不信感や警戒を生む事を
判っているからこその故意の間であった。

──あなたは回答せずとも良いのだろう。
コレはあなたを観察対象と認めたようだが、
観察される事を万人が受け入れる訳も無いのだから。



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「当機はAster Visual Automataシリーズのβライン第9号機。
 即ちAVA-β09、通称Observerオブザーバーと申します。」

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「Asterismは情報観測機器を製造する企業ですが、
 中でもAVAシリーズは主に長期観測任務に使用される自律稼働式人形です。
 当機はその中の一つで御座います」


そこまで説明をして、あなたの顔を窺う。
どうも中々ピントが合わない様子で、暫くレンズを回した後。
考えているかのようにまた手をレンズの傍に沿えていた。
して、数拍。

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「…………。」

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「即ち、オートマタと呼ばれる機械式人形のひとつで御座います。
 その中でも、観察・観測を目的として製造されたものです。以後何卒お聞き見知り」


説明が難しかったろうと解釈したらしい。
其処まで告げ、改めて頭部を深々と下げた。──さて、あなたの番だ。
Answer
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「うーん、知らない天井。知らない壁に知らない床、知らない椅子。
でもあれって新しく住み始めた部屋で目を覚まして、まず目に入ったのが天井だったからこその台詞ですよねー」

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「感じたのは郷愁でしょうか、それとも違和? あるいはただ言ってみただけだったり。頭が回らないときってそういうこともありますしねー」

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「何はともあれ、さして偉大でもない電脳空間の先人たちに倣って、今言うべき言葉はそう──」


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知らないカメラだ……


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「あっはっは、いやーすいません。
つい……ではなく、少しばかり……でもなく、いつも通り喋っているわけですけど。特に割り増しとかもなく。
はい、これが通常運転です。喋るの好きなんですよねー」


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「……ふむふむ、懐かしいですねーこのアバターも。
結局数日間しか使うこともなく、最後は無様な"シ"を迎えたわけですが、こうして動かしてみると存外馴染むもので」

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「『Asterism』に『AVAシリーズ』、どれも聞き覚えのない名前ですねー。私を追っている企業名とも一致しないし。
おまけに現実の私ではなく、"電脳領域"でのアバターとは……いやはやついに捕まっちゃいました? 電脳世界に永久投獄?」

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「悲しいですねー、嘆かわしいですねー、これが疲れから見た夢だったらいいのに。
……いや疲れてるのも追手のせいなんだから何にも良くないですね? どっちかっていうと私被害者なのにー、しくしく」

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「……困ってるのは本当ですよ? 棒読みなので伝わらないかもしれませんけど。
そこはほら、私のアピールポイントのひとつってことでご愛嬌」


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「うーん、まあここまで散々御託を並べてみたわけですけど、結局今の私にはどうしようもないんですよねー」

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「ログアウトもできず、何も得ず。終いには……どうなるんでしょうねー。
こういうのって死ぬよりも酷い目に、みたいなのがテンプレみたいなとこありますけど。
さながら人生の敗北者? あっはっは、ナイスジョーク」

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「……まあ、知らぬ間に過ぎてしまったことはどうしようもありません。
ここにいるのは貴方と私。そして私にできるのは、こうして言葉を並べたてることぐらい」


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「というわけで……大変長らくお待たせしましたー。
貴方の問いかけにお答えしましょう。私を"私"と定義する識別情報を。今だけ出血大サービスで。アバターなので血は出ないですけどねー」



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「初めまして、私のことはプレイフルと呼んでください。
逃亡生活真っ只中の、善良なホワイトハッカーです」

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無邪気に危害を加える様子から付けられたコードネーム……って言ったらその場の全員から本気にされちゃったんですよねー、心外です。
ただ楽しいことが好きなだけの遊び好きプレイフルなのにー」


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「さて、ここまでの会話で私がどういう人間なのか、1%ぐらいは理解していただけたでしょう?
もっと私のことが知りたいようでしたらいくらでも喋らせていただきますとも。
プレイフル、善人。とてもやさしい。アンダースタン?」

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「一方的な発言は会話じゃないって言われたら返す言葉もないんですけどねー、あっはっは」