Chapter01-05

記録者: フェルヴァリオ (ENo. 64)
Version: 1 | 確定日時: 2025-11-27 04:00:00

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  ──カシャ


シャッターの音の後、あなたを向いていたレンズがふと向きを変える。
何か未知のことを認識した様子で、その後にまたあなたにひとみが向いた。

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「観察対象、最終質問を提示します」


この対話の終端が近いようだ。
不思議な白い部屋での対話は、何の説明もなく始まり、そして終わるらしい。

奇妙な観察者は感慨もなく告げ、一拍。

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──あなたは、何をもって“自らの存在に価値がある”と判断しますか?


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「それは役割でも、使命でも、功績でも構いません。
 また、価値は不要であるとする見解も有益な観測結果となります。

 あなた自身が、どの基準で己を“肯定”し、
 何をもって“無価値”とせずにいられるのか。

 その価値に他者を如何にして組み込んでいるのか、
 その内的構造を、開示してください」


──あなたは自らに〝どのような価値〟があると認識していますか?

 
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「当機は、あなたの答えを推論する事はできても──
 代弁する事はできません
 故に此度は、 あなた自身の言葉で語られることを要求します」
Answer
カメラのレンズがわずかに動き、
静かでありながら深い問いが投げられる。

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「──あなたは、何をもって“自らに価値がある”と判断しますか?」

その瞬間。

ピーッ。

フラスコが高い音を立て、
調合が完了したことを知らせる。

フェルヴァリオはその音にだけ反応し、火を止め、
ゆっくりとフラスコを持ち上げる。
まだ答える気配はない。

しばらく沈黙してから、ようやく口を開いた。

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「……それは、竜であること?」

問い返すような、探るような声。

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「この鱗や爪、
 この身体そのものに……お金という“価値”がつく。」

フェルヴァリオはフラスコを冷却皿に置き、
自分の指先──爪の縁をじっと見つめる。

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「竜ってだけで、高価なんだよ。素材として扱われる。
 ……それが価値なのかって言われたら、わからない。」

淡々としながらも、声にはひどく冷えた影が差していた。

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「いつかは、もしかしたら狩られるのかもしれないし。
 気を抜いたら、こうやって……錬金術の材料にされる日が来るかもしれない。」

それを冗談として笑うこともできたはずだ。
けれど今のフェルヴァリオは、笑わなかった。

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「生き物に値段がつくってさ…… 便利でもあり、怖くもある。」

フラスコから立ちのぼる蒸気が、白い部屋の光を歪ませる。

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「じゃあ、“何者でもない” 普通の人間だったら価値はあったと思う?」

自分に向けているのか、カメラに向けているのか。
わからない問いが静かに落ちる。

そして、ほんの少し間を置いて。

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「……わからないね。」

そう呟いた声は、
完成した薬品よりずっと淡く、消えてしまいそうだった。