カメラのレンズがわずかに動き、
静かでありながら深い問いが投げられる。

「──あなたは、何をもって“自らに価値がある”と判断しますか?」
その瞬間。
ピーッ。
フラスコが高い音を立て、
調合が完了したことを知らせる。
フェルヴァリオはその音にだけ反応し、火を止め、
ゆっくりとフラスコを持ち上げる。
まだ答える気配はない。
しばらく沈黙してから、ようやく口を開いた。

「……それは、竜であること?」
問い返すような、探るような声。

「この鱗や爪、
この身体そのものに……お金という“価値”がつく。」
フェルヴァリオはフラスコを冷却皿に置き、
自分の指先──爪の縁をじっと見つめる。

「竜ってだけで、高価なんだよ。素材として扱われる。
……それが価値なのかって言われたら、わからない。」
淡々としながらも、声にはひどく冷えた影が差していた。

「いつかは、もしかしたら狩られるのかもしれないし。
気を抜いたら、こうやって……錬金術の材料にされる日が来るかもしれない。」
それを冗談として笑うこともできたはずだ。
けれど今のフェルヴァリオは、笑わなかった。

「生き物に値段がつくってさ…… 便利でもあり、怖くもある。」
フラスコから立ちのぼる蒸気が、白い部屋の光を歪ませる。

「じゃあ、“何者でもない” 普通の人間だったら価値はあったと思う?」
自分に向けているのか、カメラに向けているのか。
わからない問いが静かに落ちる。
そして、ほんの少し間を置いて。

「……わからないね。」
そう呟いた声は、
完成した薬品よりずっと淡く、消えてしまいそうだった。