Chapter01-04

記録者: フェルヴァリオ (ENo. 64)
Version: 1 | 確定日時: 2025-11-27 04:00:00

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「では観察対象。それを踏まえて、次の問いです」


シャッターは下りないまま、
ただピントを合わせるようなジジ、という小さな音だけが聴こえてくる。

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「あなたの価値観を測ります。
 ──あなたにとって譲れないものは何ですか?
 自由でしょうか、信頼でしょうか、愛情でしょうか、それとも秩序でしょうか 」

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「その理由も含めて説明してください。
 対象や状況が変わった時、
 あなたの答えはどのように変化するでしょうか?」


──あなたは自らの価値観をどのように認識していますか?

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「譲れないもの、とひとえに考えても即座に思いつかぬ場合もあるでしょう。
 自由、信頼、愛情、秩序、誇り、忠誠、知識……無数の選択肢が考えられます。」


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「当機は観測を第一義として設計されています、
 どのような思考をせど、必ず『観測』という目的を前提に持ちます。

 これは精神的価値としての『誇り』や『忠誠』とは異なります。
 しかし、機能としての観測が揺るぎ得ない前提であるという点では、
 それらに類する不変性を持つと言えるでしょう」


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「思考の前提、当然と感じている事、
 それこそ、先の思考を組み立てる際に自らが重視したものを改めて噛み砕くと良いのやも知れません」


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「回答は単一である必要はありません。
 譲れない価値の間で揺れる感情や葛藤も、重要な要素です。
 必要に応じて検討を続けてください」

Answer
カメラの電子音が、ジジ、と小さく一度だけ鳴った。
そして、無機質な声が次の問いを投げかける。

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「──あなたにとって“譲れないもの”とは何ですか?
 自由でしょうか、信頼でしょうか、愛情でしょうか、それとも秩序でしょうか」

フェルヴァリオは、火を弱めながら小さく息をついた。
すぐには答えない。質問を転がすように、フラスコの底をくるりと回す。

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「……この世界の貨幣、かな?」

ぽつりと出たその言葉は、少し意外で、少し現実的だ。

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「貨幣って、生きていくための道具だろ。
 錬金術を続けるにも材料費がいるし、
 依頼をこなすにも生活を回すにも絶対必要なんだ。」

自嘲気味に口元が歪む。

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「竜って、金銀財宝が好きだろう?
 ……まあその通りなんだけど。
 隠し持ちたいんだよ、オレも本能では。」

鼻で笑うように、軽く肩を揺らした。

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「でも、正直……どうでもいい。」

その一言が落ちた瞬間、空気が少し変わる。

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「宝は宝だけど……守っても、増やしても、
 それだけで何かが満たされるわけじゃないんだよ。」

フェルヴァリオはフラスコを火から外し、
冷却器につなぎながらゆっくり続ける。

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「本当は、もっと別のものが欲しいんだと思う。」

言葉がやわらかく、静かに落ちていく。

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「……誰かと関わり合いたいのかも。」

その言葉は、彼自身がいちばん驚いているようにも聞こえた。

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「兄弟はいるけど……
 オレ自身はまだまだ未熟でさ。
 うまく距離の取り方が分からなくて、
 どう近づくか、どう離れるか……いつも探ってる。」

目の前の液体が、徐々に澄んだ色へと変わっていく。

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「だから、譲れないものって聞かれたら……」

沈黙が数秒。
そして、幼くも正直な声。

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「 “つながり” なのかもしれないな。
 失いたくないし、ちゃんと作れるようになりたいし……
 まだ方法を探してる途中なんだ。」

それだけ言うと、フェルヴァリオは再び作業に集中する。
けれど、その横顔はいつもより少しだけ柔らかかった。