白い部屋に置かれた机の上、
他の器具よりもやけに存在感を主張しているのが──
淡い緑色の液体が入った小瓶の列だった。
濃淡の違う緑が、規則正しくラベル付きで並んでいる。
フェルヴァリオは火を調整しながら、ちらりとその瓶たちを見る。

「……兄貴の話?」
ぼそりとした声。
しかし口元にはかすかに苦味が混じる。

「この緑のは、あの“くそでかのっぽ”の。」
軽く瓶を指で弾くと、液面がゆらりと揺れた。

「締め上げるのは得意なんだよ、アイツのこと。
体格差があるとか言われても── 結局、タッパがあるだけで鈍いから。」
兄の姿が脳裏に浮かんだのだろう。
フェルヴァリオは淡々と言うわりに、明らかに慣れた調子だった。

「黄金りんごを作ってもらわなきゃ困るのにさ。
“向こうの担当”のくせして、仕込みを後回しにして……。」
ぐつぐつ、とフラスコの液体が音を立てる。
その音に紛れるようにフェルヴァリオは呟いた。

「……大人になるのだけは嫌がるんだよ、あの人。
背だけ伸びて中身は子どもみたいで。」
かき混ぜ棒を動かしながら、
まるで言い訳するように肩をすくめる。

「兄貴たち、全員そう。
竜のくせに妙に精神年齢がねじれてるんだ。
……オレだけが苦労するんだよ、ほんと。」
そう言いながらも、その声にはどこか慣れ親しんだ気配があって──
心底うんざりしながらも、嫌いではないような、微妙な温度があった。
白い部屋の空気は相変わらず静まり返っている。
その中でフェルヴァリオの声だけが、炎の揺れる音と混じり合うように淡々と落ちていく。