世界、と言われて少し迷ったような素振りを見せる。
小さく唸って、何かを悩んで。それからおずおずと切り出すのは

「属する世界って、今いる世界ですか?」
「それともワタシが生まれた世界の方を指しますか?」

「ええと」「ワタシ、今迷子みたいな感じなんデス」
「本来あるべき世界と別の世界で彷徨っているというか……」
ここに居ない時の少女が置かれている状況が特殊であるという話だった。
けれど、まあ。不明瞭であるというのなら、返答があるはずもなく。

「……まあ、両方お話ししまショウ!」
「観測結果がブレたらその時はその時デス!」
勝手にそう結論付けるまで時間はそう掛からなかった。

「ではワタシが生まれた世界から」「少し前までは平和でした」
「色があって、アナタみたいなカメラを作れる程度の技術が発展してて……」

「でも。ある時、世界から色がなくなってしまったんデス」
「ワタシも前はもっと鮮やかな色をしていマシタ。今はほぼ白黒デスけど」
どんな色だったか。記憶の中にはあるけれど、それを表現する術を持たない。
描くような紙も絵具も持っていなければ、色を正確に再現するような特殊技術もないのだから。

「色褪せた世界は、何もかも曖昧になってしまいマシタ」
「有機物も無機物も容易く混ざりあって、元の形もどんどん失われて……」

「東には"修羅の国"という言葉があるらしいデスけど、まさにそんな様相デス」
そうなった原因を少女は知らない。ただ一方的に日常を奪われた。
何時の世も一般市民というのはそういうものだ。何か大きなものに振り回されて、被害を被る。

「でも、悪いコトばかりじゃありませんデシタ」
「ワタシはある時、別の世界の入り口を見つけたんデス」

「そこは黄昏色の空がずっと続いている不思議な街デシタ」
「ヒトならざるモノにも割と優しい場所デス」「住民も皆、どこかに異形のパーツを抱えていますから」
僅かに力を籠めるようにすると、少女の服の裾からも尻尾のようなものが覗く。
あくまでも観測させることが目的なのですぐに仕舞われたが。

「大体ここまで語れば満足頂けマスかね?」
「とりあえず今は、そうやって二つの世界に属していると言えるデショウ」