Chapter01-01

記録者: ドロップ (ENo. 132)
Version: 1 | 確定日時: 2025-11-27 04:00:00

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あなたがふと気が付けば、真っ白な部屋に居た。
そこには椅子がひとつ置いてあるだけで、他に何もない。

あなたがその椅子に、座ったとき
あなたは視界の“先”に、誰かがいることに気が付いた。
白い部屋のなか、白い椅子に誰かが、座っていた。


  ──カシャ


何かが擦れるような、もしくは閉じるような音。
その音は対面の椅子から聴こえてくる。

それは────人物と解釈は出来はするだろう。

腕が二本あり、脚が二本ある。
それなりに体格の良さそうな身体に──無機質な四角いかたちが、乗っている。
あなたにその知識があるならば、それはカメラのように見えるだろう。
艶やかなレンズがじっとあなたを見詰めるように据えられていた。


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「……」


……そうしてその状態のまま、暫く。
沈黙に耐えかねてか、将又訝しんでか、あなたが口を開こうとした時、
もしくは、十分すぎる時間が経った後に、声がする。

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「……あなたは私を観測可能ですか?」

男性的な声だ。決して被り物の様にくぐもった声はせず、妙に鮮明な音色。
どこか奇妙な言い回しの後、まるで咳払いをするように、
人であれば口元に当たるだろう所に軽く手を添えて、
それから改まって一つ礼をした。

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「先ほどは不躾に見つめてしまい申し訳ありません。
 状況を把握するため暫し観察を行っておりました」

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「当機は此の場所について説明をすることが不可能です。
 この部屋についての事前情報はインストールされておりません。
 再起動した時にはこの部屋に在りました」


……即ち、この者もまたこの部屋に居る理由を知らないという事だろう。
彼方もまた、この部屋に呼ばれた者の一人……ひとつであるようだ。
現状を確認するようにレンズを左右に向けたソレは、しまいには改まってあなたにレンズを向け直す。
ピントを合わせるようにレンズがくるりと回り、それから頷くように一つ頭を揺らした。

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「観察対象、まずはあなたという存在を記録するための
 初期照合を致します」

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「あなたの識別情報を教えてください。──名前、呼称、あるいはそう呼ばれる理由を」

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「あなたを“あなた”と定義する特徴を」




──あなたは得体の知れない観察者に、どのような自己紹介をしますか?


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「──失礼致しました。まずは当機から情報を開示すべきでしたね」

きゅり、とレンズがまた周り、一拍の間。
まくしたてる事は不信感や警戒を生む事を
判っているからこその故意の間であった。

──あなたは回答せずとも良いのだろう。
コレはあなたを観察対象と認めたようだが、
観察される事を万人が受け入れる訳も無いのだから。



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「当機はAster Visual Automataシリーズのβライン第9号機。
 即ちAVA-β09、通称Observerオブザーバーと申します。」

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「Asterismは情報観測機器を製造する企業ですが、
 中でもAVAシリーズは主に長期観測任務に使用される自律稼働式人形です。
 当機はその中の一つで御座います」


そこまで説明をして、あなたの顔を窺う。
どうも中々ピントが合わない様子で、暫くレンズを回した後。
考えているかのようにまた手をレンズの傍に沿えていた。
して、数拍。

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「…………。」

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「即ち、オートマタと呼ばれる機械式人形のひとつで御座います。
 その中でも、観察・観測を目的として製造されたものです。以後何卒お聞き見知り」


説明が難しかったろうと解釈したらしい。
其処まで告げ、改めて頭部を深々と下げた。──さて、あなたの番だ。
Answer
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「まってまって~、識別情報ってなに?
ええと、まって考えるから~ウーン、言葉が難しいよカメラくん」

暫く考えるそぶりをするが、本当にそぶりという様子。
目線はまるで落ち着きが無く、別の事を考えているような上の空にも見える。

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「ああわかったぞ、識別情報って名前とかの事だね?
それならボクは『ドロップ』という名前だよー。
でもさでもさ、テイギするってなら名前だけじゃ足り無さそ」

そうしてまた考える。今度はわりと真剣な顔をする。まぁ一瞬だけ。
定義、テイギ。己の定義。
もし自分が“人間であるならば”どうするだろう?
自分の種族はよくそう考える。

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「ボクはヒューマノイドっていう作り物なんだ。
作り物はイキモノより作り手の意思が加わるから定義が簡単だと思わない?
でもさ、作り物本人にはね、わからないんだよ」

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「たぶん自分なりに自分の在り方を考えた事はあると思うんだけど、忘れちゃったんだ。
改造されて、触手がついたり、薬が無いとイヤな気持ちになったり、自分のカタチすらフニャフニャさ」

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「でもイイんだ。
わからなくてもイイって思えることがボク自身の在り方なんだよ、多分ね。
だってわからなくてイイって思えるなら、不足は無いって事でしょ?」

思考は不足しているかもしれないが。

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「あとはそうだなぁ…肉が好き。血の味がするくらい生焼けの大きいステーキ。
あとメロンソーダ。クリームじゃなくてバニラアイス乗ってるやつ。
それから気持ちいい事なら何でも好き~。あと弱くてバカでザコい子が好き。可愛そうな子がだーーーい好き」

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「ああ、こんなもんでいーい?
なんならまだ自分語りできるけど~?」