──ノイズ音。
その部屋には、マイクやスピーカーの類があるだろうか?
それは人の姿を持った者の口から発せられていた。
『…あの、誰かいませんか…』
年老いた男性の声がする。
体に見合わぬ頭部を左右に振って、"誰も居ない"ことを確認した。
『……もしかして、「人と喋ってきておいで」と言ったのに、間違えちゃって、誰も居ない所に私を送り出したんですか?』
先程まで誰かと会話していたのか、その者に向かって声を投げかけた。
しかし誰の返事もない。
ただ独りだ。
自信のなさげな声色は、王者の風格を感じさせる頭を持った"それ"には、あまりに掛け離れている。
『…あ、これは…椅子、と呼ばれるものですよね。私のいたところでは、何人かがまとめて座る大きなサイズのやつしか見たことがありません。しかし、これは一人用の椅子、というものでしょうか。初めて見ました』
唯一有ったものを認識すれば隣に並び、口調から好奇心を溢れさせた。
──しばらくそのまま。
しばらく、ではなく、随分と時間が経った。
『……これは、もしかして…私、に用意されたものなのでしょうか?』
座る、という発想がなかったのかもしれない。
長い間立ちっぱなしであった"それ"は、
覚束ない、子供のような動作で椅子に腰掛ければ、
目の前にいる者に気が付いた。