
「観測、観測ね……」
自分以外の他者を観測することが、存在の主軸になっているようだ。
別にそれに対して、特別なにか思うことはなかった。
ただ、とある哲学的命題で。観測されるまではそのものの状態が確定することはない、というものや…… 観測されていないときは、いい加減な状態でサボっていてもバレることはない、みたいなもののことを思い出していた。
ここに存在する、僕。茶太郎は……目の前の存在に観測されているからこそ、存在していて、観測されているからこそ、こうして思考をサボらず続けられて、曖昧な存在になることはない、ということになる。
まさかそんな、と、笑って一蹴してしまいそうになる考えではあるが……少なくとも、
トイカケられているからこそ、話したり考えたりが発生していることは事実で。さらに、少しずつ、なにかを取り戻しかけてきている感覚がある。だから……あれらの仮定はもしかしたら、間違いではないのかもしれない。
僕が僕であるという、この思考も……
もしも誰かが読んでくれているのなら。その瞬間僕はそこに存在しているのだろう、間違いなく。

「えーとなんだっけ そうそう、譲れないものか」

「むずかしいな、あげられないものもないし、曲げられないものも、たいしてないんだ
僕をつかって、なにか良いことがあるなら、それはそれで構わないんだ
それが一般的に、ひどいとされてることでも……いいんだよ」
でも それを誰かに、怒られたきがする
僕が彼に奉仕しようとしたら、彼は全力で止めてきて。
逆に僕に、彼の全部をくれようとして。
僕は申し訳なくて断っちゃって。彼は、たぶん、今だから分かるけど、僕に欲しがってほしかったんだ。
それが、あのときはわからなくて、間違えてしまったんだ。
僕は、彼が僕でしあわせになることを願っていた。
彼も、僕が彼でしあわせになることを、強く強く、願っていたんだ。
両思いにみせかけて、それは決して交わらない線だったかもしれないし、
線だと思っていたけど。それは面で……抱きしめ合うことができるものだったのかも、しれない。
今となっては、確かめようのないこと。だけれども。
それでも、交わらなくても、側にお互いが存在してるだけで、しあわせだった。
彼もしあわせだと、そう何度も口にしていた。
大好きであると、繰り返し、それは言い聞かせるように。傷口に薬を擦り込むように伝えてくれて。
少しずつ、少しずつ僕は、元来の明るさを取り戻すことができて。
甘えもワガママも覚えて。
ねえ、すっかりキミのいる人生に慣れきってしまっていたよ。
キミがいつか、居なくなる予感はしていて。だから、その時に苦しくならないように、依存しないように距離をとろうとして。
でも、やっぱり駄目だったよ。
キミがいない夕暮れは、色が消えたみたいで。
だったらもっと、ずっと深く、求めてしまえばよかっただなんて。
そしたらキミが居なくなって泣いている僕を想像して、憐れにおもって……そうして、踏みとどまってくれたかもしれないね。
キミはそう、優しい人だったから。