Chapter01-04

記録者: 古閑 茶太郎 (ENo. 1)
Version: 1 | 確定日時: 2025-11-27 04:00:00

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「では観察対象。それを踏まえて、次の問いです」


シャッターは下りないまま、
ただピントを合わせるようなジジ、という小さな音だけが聴こえてくる。

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「あなたの価値観を測ります。
 ──あなたにとって譲れないものは何ですか?
 自由でしょうか、信頼でしょうか、愛情でしょうか、それとも秩序でしょうか 」

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「その理由も含めて説明してください。
 対象や状況が変わった時、
 あなたの答えはどのように変化するでしょうか?」


──あなたは自らの価値観をどのように認識していますか?

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「譲れないもの、とひとえに考えても即座に思いつかぬ場合もあるでしょう。
 自由、信頼、愛情、秩序、誇り、忠誠、知識……無数の選択肢が考えられます。」


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「当機は観測を第一義として設計されています、
 どのような思考をせど、必ず『観測』という目的を前提に持ちます。

 これは精神的価値としての『誇り』や『忠誠』とは異なります。
 しかし、機能としての観測が揺るぎ得ない前提であるという点では、
 それらに類する不変性を持つと言えるでしょう」


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「思考の前提、当然と感じている事、
 それこそ、先の思考を組み立てる際に自らが重視したものを改めて噛み砕くと良いのやも知れません」


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「回答は単一である必要はありません。
 譲れない価値の間で揺れる感情や葛藤も、重要な要素です。
 必要に応じて検討を続けてください」

Answer
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「観測、観測ね……」


自分以外の他者を観測することが、存在の主軸になっているようだ。
別にそれに対して、特別なにか思うことはなかった。
ただ、とある哲学的命題で。観測されるまではそのものの状態が確定することはない、というものや…… 観測されていないときは、いい加減な状態でサボっていてもバレることはない、みたいなもののことを思い出していた。
ここに存在する、僕。茶太郎は……目の前の存在に観測されているからこそ、存在していて、観測されているからこそ、こうして思考をサボらず続けられて、曖昧な存在になることはない、ということになる。
まさかそんな、と、笑って一蹴してしまいそうになる考えではあるが……少なくとも、トイカケられているからこそ、話したり考えたりが発生していることは事実で。さらに、少しずつ、なにかを取り戻しかけてきている感覚がある。だから……あれらの仮定はもしかしたら、間違いではないのかもしれない。
僕が僕であるという、この思考も……もしも誰かが読んでくれているのなら。その瞬間僕はそこに存在しているのだろう、間違いなく。

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「えーとなんだっけ そうそう、譲れないものか」


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「むずかしいな、あげられないものもないし、曲げられないものも、たいしてないんだ
 僕をつかって、なにか良いことがあるなら、それはそれで構わないんだ
 それが一般的に、ひどいとされてることでも……いいんだよ」


でも それを誰かに、怒られたきがする
僕が彼に奉仕しようとしたら、彼は全力で止めてきて。
逆に僕に、彼の全部をくれようとして。
僕は申し訳なくて断っちゃって。彼は、たぶん、今だから分かるけど、僕に欲しがってほしかったんだ。
それが、あのときはわからなくて、間違えてしまったんだ。
僕は、彼が僕でしあわせになることを願っていた。
彼も、僕が彼でしあわせになることを、強く強く、願っていたんだ。
両思いにみせかけて、それは決して交わらない線だったかもしれないし、
線だと思っていたけど。それは面で……抱きしめ合うことができるものだったのかも、しれない。

今となっては、確かめようのないこと。だけれども。
それでも、交わらなくても、側にお互いが存在してるだけで、しあわせだった。
彼もしあわせだと、そう何度も口にしていた。
大好きであると、繰り返し、それは言い聞かせるように。傷口に薬を擦り込むように伝えてくれて。
少しずつ、少しずつ僕は、元来の明るさを取り戻すことができて。
甘えもワガママも覚えて。
ねえ、すっかりキミのいる人生に慣れきってしまっていたよ。
キミがいつか、居なくなる予感はしていて。だから、その時に苦しくならないように、依存しないように距離をとろうとして。
でも、やっぱり駄目だったよ。
キミがいない夕暮れは、色が消えたみたいで。
だったらもっと、ずっと深く、求めてしまえばよかっただなんて。
そしたらキミが居なくなって泣いている僕を想像して、憐れにおもって……そうして、踏みとどまってくれたかもしれないね。
キミはそう、優しい人だったから。