
「……え?」
頭の中に、氷が刺さったような感触の、頭痛がした。
助けをもとめてくる、相手。
それを想像しようとしたときに、一瞬、だれかの姿が脳裏に過ったのだ。
あれは一体誰だったのか。なぜ、こんなにも喉の奥が熱くてたまらなくなるのか。

「いやっ……うん、たすけるよ、それが誰であっても、
損害……は、まあ、僕が支払えるもので誰かが助かるなら、それに越したことはないよね……」
小さく溜息をつく。呼吸が浅くなっていたからだ。
さっきから、降りしきる雪と、そこに半分埋もれたような、いつからそこに打ち捨てられていたのかわからない、ニンゲンの姿が浮かぶのだ。

「助けたかった、よ…」
質問への回答とは別に、溢れる声が。
そうだ、僕はあの人を。いつでも助けてあげたかったんだ。
自分とは無関係な、苦しみを抱えていて。それでも笑っていて。優しくて。
苦しみを持たせて貰えないことが辛くて、泣いたこともあった、ような、気もする。
考えようとすると、頭が痛くて。
その扉を開いてはいけないと言われているみたいなのに。
扉の向こうからは、声が聞こえてくるようだった。
──いまは、苦しくない?
そこは、穏やかかな。
きっとそうだ。穏やかで、あたたかくて。
君が好きだったあの夏に、永遠に閉じ込められて。
そういうところに、キミは行ってしまって。
──僕は、いまは苦しくて、すごく、寂しいよ。
そして、帰ってこなかった。
僕は、当たり前に、あの日々が続くと思っていたんだ。
──でもね、たとえ僕が苦しくても……君が安らかなら、僕はそれで、構わないんだ。
だから、損害があっても、僕はキミを助けたい それが、僕にとって辛いことでも。
でも、助けなんて。ほんとはいらなかったんだ。
キミの望みは、そうなること、だったから。
苦しみの果てに、そうなったのだったなら、助けようもあっただろう。
助け、られたら、よかったなあ と、僕は小さく口に出した。