
「苦労して考えたわりに結構一方通行だな!」
「させてくれよ、会話のキャッチボールを」
いまいち伝わっていなさそうな様子に思わず嘆息。
取り繕う必要もないとみて、段々と素のところから言葉を選び始めている。

「にしても。食事や着替えねえ……そのツラで言われると、
なんだか冗談みたいに聞こえてくるな。いや、着替えぐらいはするのか?」
じろじろとオブザーバーを上から下まで眺める。食品を摂取する部位はまずなさそうだ。
それからくると踵を返して、顎に手を当てながら数歩進み、その間頭は思案を続ける。
帰る方法、それと並行して投げかけられた質問――世界や、普通についての返答を、律儀に考えていた。
どうせ大した罰は下るまい。暇を潰して、時が来るのを待つのも悪くはない。

「うちの世界は、まあ……わりと平和なのが特徴なんじゃないかな。
大戦に懲りた偉い人達が、ここ数十年はうまく手を取って助け合ってる。
多様性を大事にして、大地はさまざまな文化があり、尊重されてる。狭い範囲で例外はあるけどね」

「あっというまに皆ガラケーからスマホに持ち替えて……
というか機械類が色々自動化され、手でやる温かみが~なんて言われてるっけね。
最近だとAI技術も急速に発展してて――オブザーバーさんみたいな姿かたちの人もちょくちょくいるよ」
とまあ、そんなもんだ。あっちと比べても特に面白味がある訳ではない。
すこし人形が少ないぐらいで、生活スケジュールも、出勤様式も、星の並びも差はない。

「俺は何かを普通って言って型に嵌めるのあんま好きじゃない。
どちらかといえば、優しくて、楽しくて、暖かいものが普通寄りであればいいとは思うけど」
「よく寝て、よく食べて、心身ともに健全で長生きするのが、人々のスタンダード。
すくなくとも俺は、それを普通にできるように頑張ってるかな……なんてね」