Chapter01-05

記録者: ニュクテリス (ENo. 100)
Version: 1 | 確定日時: 2025-11-27 04:00:00

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  ──カシャ


シャッターの音の後、あなたを向いていたレンズがふと向きを変える。
何か未知のことを認識した様子で、その後にまたあなたにひとみが向いた。

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「観察対象、最終質問を提示します」


この対話の終端が近いようだ。
不思議な白い部屋での対話は、何の説明もなく始まり、そして終わるらしい。

奇妙な観察者は感慨もなく告げ、一拍。

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──あなたは、何をもって“自らの存在に価値がある”と判断しますか?


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「それは役割でも、使命でも、功績でも構いません。
 また、価値は不要であるとする見解も有益な観測結果となります。

 あなた自身が、どの基準で己を“肯定”し、
 何をもって“無価値”とせずにいられるのか。

 その価値に他者を如何にして組み込んでいるのか、
 その内的構造を、開示してください」


──あなたは自らに〝どのような価値〟があると認識していますか?

 
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「当機は、あなたの答えを推論する事はできても──
 代弁する事はできません
 故に此度は、 あなた自身の言葉で語られることを要求します」
Answer
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ニュクテリス
「ボクの価値はまだないよ。無価値って言って差し支えないかな。
 だってまだ生まれたて、何も成しちゃいないんだから」

これにとっての価値はそこにあるようだった。
何かを成すこと。何だっていい。
人を助けるとか、美味しい料理を無尽蔵かつ無差別に振る舞うだとか。
そのどれもを達成していない今、これに価値はない。――否、ひとつだけあった。

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「強いて言えば、いまあなたの欲求を満たしていることが価値になるかな。
 ここであなたの希望を叶えられるのはボクひとりだけでしょ?
 ここであなたにとって最も価値があるのは、このボクだ」

消極的な結果ではあるものの。それがこの問いかけへの答えだった。
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「……でも、価値ってそんなに大事かなあ。無価値なものだって、存在していなくちゃ。
 そうじゃなきゃ……価値あるものが本当に価値を持ってるのか、区別できないかも」

それは自信なさげに。本心では、『あらゆるものに価値がある』と言いたいのだ。
けれどそれは、無価値に対する否定ともいえる。
無価値であることで自らを肯定するものだっている、と世界の狭間の知識で知っている。
だからその問いかけには、上手く答えられないようだった。