
ニュクテリス
「ボクの価値はまだないよ。無価値って言って差し支えないかな。
だってまだ生まれたて、何も成しちゃいないんだから」
これにとっての価値はそこにあるようだった。
何かを成すこと。何だっていい。
人を助けるとか、美味しい料理を無尽蔵かつ無差別に振る舞うだとか。
そのどれもを達成していない今、これに価値はない。――否、ひとつだけあった。

「強いて言えば、いまあなたの欲求を満たしていることが価値になるかな。
ここであなたの希望を叶えられるのはボクひとりだけでしょ?
ここであなたにとって最も価値があるのは、このボクだ」
消極的な結果ではあるものの。それがこの問いかけへの答えだった。

「……でも、価値ってそんなに大事かなあ。無価値なものだって、存在していなくちゃ。
そうじゃなきゃ……価値あるものが本当に価値を持ってるのか、区別できないかも」
それは自信なさげに。本心では、『あらゆるものに価値がある』と言いたいのだ。
けれどそれは、無価値に対する否定ともいえる。
無価値であることで自らを肯定するものだっている、と世界の狭間の知識で知っている。
だからその問いかけには、上手く答えられないようだった。