譲れないもの。そんなもの、生まれたてのこれにあるだろうか。
問いかけられたとき、少女は暫し硬直した。
システムのフリーズに似た動作。例外の発生。想定されていない入力。
それを解決できるのは、きっと心と呼ばれる外部装置だろう。
……それで。

ニュクテリス
「うーん……おいしいフルーツが食べられることかな?それさえあればボクは十分。
秩序が失われていても、愛情がなくても、誇りを無くしても」

「おなかがいっぱいにならなきゃひとは幸せになれないよ。
秩序を極めたディストピアは不幸せな食事を出すし、
愛情がたっぷり籠もってても嫌いなものは食べたくないし」

「……そのためなら、ボクはなんだってしちゃうなあ!
それこそ、ひと一人吸い殺したりね。血は全部吐いちゃうけど。
でも、血が甘かったらどうしよう。吸ったことないからわかんないや」
つまりこれは生き汚いのだ。生存欲求、特に食欲が何より優先されている。
それに作られたとき、倫理を入れるのを忘れたのだろう。
血について語るその目は深い闇を宿していた。