
「お前さ、うちに採用されたいからって嘘つかなかった?」

「嘘なんか言ってねーよ。事実を話しただけさ」
ノボルから
ラボで働きたいと言われ、三嶋の夫婦に話を通してから数日後。
とりあえず面接となった結果。
ノボルはなんとまあその日の内にすぐ採用になった。
決め手は「
怪奇現象に遭った事が有る」というコイツの一言だったらしい。

「幽霊とか視えるタイプじゃねーだろオメー。お前からそんな話聞くの初耳だぞ」

「瀬名の姐御と会ってない間に色々有ったんだっつーの。なんなら今も視えてんだわ、奴が」

「どこで何を視て何が有ったんだよ?」

「それは言えない。話したらあの会社に何されるかわかんねーし」

「言えよ!
ったくもう、そんなあやふやな話だけでよくコイツを採用したな。三嶋の夫婦も」
結局この間まで働いてたらしい高時給のバイトの事も教えてくれないしなんなんだ。

「一度『未知』に触れた人や『何か』に魅入られた人はその後も巻き込まれる可能性が有るから。
だから三嶋夫婦はノボルさんを採用したんだと思う」

「未知に触れたったってコイツ何も吐きやしねぇし根拠も全く無ぇのに?
オメーも科学の結晶のクセにすっかり非現実的なこと言うようになっちまったな」
ステラボード。
あのアプリがいつの間にかラボのコンピューターにインストールされてて、トロワとロミネがあのゲームに触れてからすっかり世界が変わっちまった。単なる機械工学を扱う研究所だったはずのうちのラボが、それ以来、異世界渡航の研究を始める始末。
あたしがステラボードから持ち帰った――そこで出来た仲間から預かった――物の数々のおかげで異世界の存在の証明はできるようになったけど、渡航技術についてはもっと先の話になりそう。
多分異世界人の方が先にこっちに来るんじゃないか。それかあたしの知らないところでもう来てるか。
『
世界はいつだって可能性に満ちている』――良い事も、悪い事も、きっとそうなんだろう。
三嶋の坊ちゃんの件だってそうだ。普通の人間には知り得ない何かが裏で起きてる。

「その後も巻き込まれるって……。もうあんな経験はこりごりだけどな……。
まあでも、これからまた同僚としてよろしくな。瀬名の姐御」

「へいへい。わかったよ。そんじゃお前も手伝えよ、ラボの掃除」

「了解ー。愛しの彼女の為にも頑張らねーとな」
あたしが言うのも何だけどこんなんでいいのか?うちのラボ。
まあノボルの存在も研究の足しになるならいいけどさ。
ちょっと先が思いやられる、気がする。