Chapter01-02

記録者: 無邪気な迷い人 (ENo. 81)
Version: 1 | 確定日時: 2026-02-18 04:00:00

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「……」

あなたの回答を──若しくは無回答を聞き、
ソレは少しじっとあなたを見詰めていた。


  ──カシャ


それから、また先にあった音が一つ。
撮ったものを確認するような間の後、深々と頭が下がった。

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「観測結果が不明瞭です。
 当機からはあなたの言葉を完全に受け取る事は難しいようです」

どうも椅子の〝こちら側〟と〝あちら側〟では具合が違うようだ。
あなたの言を確実に受け取れているかは、あちらもこちらも分かり得ないだろう。

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「では観察対象、続けましょう」


されどコレにとっては断片でも構わないのか、きゅり、とまたレンズがあなたを向く。


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「環境データの取得。あなたの属する世界を説明してください」

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「あなたの世界では、“普通”とはどのような状態を指しますか?」


──あなたは、異世界の存在にあなたの世界のどのように説明しますか?


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「当機の世界にはこれと言って特徴があるとは考えられません」

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「当機は異世界に対する情報を持ちません。
 よって、何が特色であるかを判断するには情報が不足しています」

──基準や比較対象が無ければ、世界の比較とは難しいものだろう。
自らの世界に当たり前に存在しているものが、他の世界では存在しない可能性すらある。
自らの視野では存在しないものが、世界の中には存在している可能性だってある。

つまりは、この質問は不毛なものではある。
……比較対象が無い限りは。


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「──あなたに回答していただくためには、
 当機の世界を説明せねばなりません。
 よって当機は、平均的な一般家庭の生活環境についてご説明致します」


もしあなたが回答に窮しているのであれば、
オブザーバーの言うものを参考に、比較して述べると良いのだろう。

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「朝9時に出社する方は、平均して朝7:22に起床致します。
 家事仕事用の自立稼働人形が6時には稼働を開始しており、
 起床し着衣を着替えた後には朝食を摂取する事が可能となります。
 起床から出勤までには平均28分31秒の時間が経過しています」

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「出勤には電車やバス──公共の車両を利用する方、
 運搬用人形を利用する方ほか、徒歩で出勤する方など様々です」

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「……コンプライアンスに基づき、出勤後については
 当機から申し上げる事は出来かねます」


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「7日を一週間という単位にし、
 うちの4日が平日、うちの3日を休日と制定されております。
 居住する地は球体の惑星、衛星は現在1つ観測されております。
 衛星及び他の惑星の生活様式については当機のデータベースには御座いません」



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「……以上の内容は参考にする事は可能ですか?」



……とはいえ、此れをなぞらえる必要も無い。
あなたの自由に回答してよいだろう。

Answer
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『──あ、また!撮るなら言ってよ!』

レンズにまっすぐ向き合って、乾いていく目にちょうど瞬きをした瞬間だった。
シャッター音に反応して声なき声を上げる。
写真を撮られるのは慣れているけれど、今は今だしそれはそれ。

頭がカメラだし、もしかしたらあれは瞬きなのかもしれないと思ったのは
丸いレンズが再び此方に向けられてからのことだった。

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『そっか、やっぱり聞こえないんだ?』

不明瞭で当たり前だ、だって音が出ていないんだから。

こんな場所だからもしかしたらと思ったけど。
残念がるでもなく、それを当然のように受け入れる。
他の誰でも同じ結果だったとは自分には知りようもないことだった。

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『……こっちの世界の普通か~』

問い掛けが続くのなら、声が届かないからといって会話を止めはしない。
口をぱくぱくと身振り大きく考える仕草。

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『え~っとね………わかんない!
 朝起きて、ごはん食べて仕事に行って~とかは一緒かも』

どれだけ考えたところで自分にとっての"普通”が
こちらの世界の普通でない以上、判断することが出来ない。
一般的な家庭の生活は多分こうだろう、という推定の話に留まってしまう。
ここにもう一人いれば、詳しく答えられたのだろうけど。

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『週に3日も休んでいいんだ……。
 風邪引いてるのに毎日夜まで仕事してるのっておかしいよね?』

これについては、どんな世界であってもきっと同じだろう。
ご飯もちゃんと食べないんだよ、などと問い掛けに関係のないことを暫くは一方的に話していた。