
「段々、カウンセリングでも受けてる気分になってきた…」
淡々と問いを続ける姿がそう思わせるのだろうか。

「…そうだな。譲れないと一言で表しても、その中身は無数にあるだろう」
観測者の言う通り、価値観とは対象や状況に合わせて様々な変化が起きるものだ。
絶対的な基準を示すことは難しい。
それこそ、プログラムされた機械でもない限り。

「まず浮かんだのは信頼と秩序かな」
常識や一般的に善とされること、社会通念上の規則。
それらに反するような判断は多くの場合下し難い。
譲れないという表現には当てはまるだろう。

「共同体の一部として暮らしている以上は、
その秩序を乱す行動は自分の不利益にもなる。
……要するに、自己保身のためだ」
面白みのない、いたってありきたりな答え。
しかし大抵の者の判断基準である筈だ。
個人で違いが出るとすれば、この基準からはみ出すのはどんな時か。
恐らくそこに、観測者の求める価値観とやらがあるのだろう。

「他に重視される価値観があるとすれば…」
浮かぶのはたったひとつ。
思考の海を泳ぎ、姿を見せるのは。

「あの子以外に、いないだろうね」
この価値観を何と呼ぶかは。
不親切だが、観測する者に任せるとしよう。