Chapter01-04

記録者: 苦労がちの迷い人 (ENo. 82)
Version: 1 | 確定日時: 2026-02-15 04:00:00

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「では観察対象。それを踏まえて、次の問いです」


シャッターは下りないまま、
ただピントを合わせるようなジジ、という小さな音だけが聴こえてくる。

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「あなたの価値観を測ります。
 ──あなたにとって譲れないものは何ですか?
 自由でしょうか、信頼でしょうか、愛情でしょうか、それとも秩序でしょうか 」

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「その理由も含めて説明してください。
 対象や状況が変わった時、
 あなたの答えはどのように変化するでしょうか?」


──あなたは自らの価値観をどのように認識していますか?

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「譲れないもの、とひとえに考えても即座に思いつかぬ場合もあるでしょう。
 自由、信頼、愛情、秩序、誇り、忠誠、知識……無数の選択肢が考えられます。」


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「当機は観測を第一義として設計されています、
 どのような思考をせど、必ず『観測』という目的を前提に持ちます。

 これは精神的価値としての『誇り』や『忠誠』とは異なります。
 しかし、機能としての観測が揺るぎ得ない前提であるという点では、
 それらに類する不変性を持つと言えるでしょう」


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「思考の前提、当然と感じている事、
 それこそ、先の思考を組み立てる際に自らが重視したものを改めて噛み砕くと良いのやも知れません」


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「回答は単一である必要はありません。
 譲れない価値の間で揺れる感情や葛藤も、重要な要素です。
 必要に応じて検討を続けてください」

Answer
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「段々、カウンセリングでも受けてる気分になってきた…」


淡々と問いを続ける姿がそう思わせるのだろうか。


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「…そうだな。譲れないと一言で表しても、その中身は無数にあるだろう」


観測者の言う通り、価値観とは対象や状況に合わせて様々な変化が起きるものだ。
絶対的な基準を示すことは難しい。
それこそ、プログラムされた機械でもない限り。

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「まず浮かんだのは信頼と秩序かな」


常識や一般的に善とされること、社会通念上の規則。
それらに反するような判断は多くの場合下し難い。
譲れないという表現には当てはまるだろう。

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「共同体の一部として暮らしている以上は、
 その秩序を乱す行動は自分の不利益にもなる。
 ……要するに、自己保身のためだ」


面白みのない、いたってありきたりな答え。
しかし大抵の者の判断基準である筈だ。
個人で違いが出るとすれば、この基準からはみ出すのはどんな時か。
恐らくそこに、観測者の求める価値観とやらがあるのだろう。

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「他に重視される価値観があるとすれば…」


浮かぶのはたったひとつ。
思考の海を泳ぎ、姿を見せるのは。

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「あの子以外に、いないだろうね」


この価値観を何と呼ぶかは。
不親切だが、観測する者に任せるとしよう。