Chapter06-fin

記録者: シャルティオ (ENo. 14)
Version: 1 | 確定日時: 2026-02-11 04:00:00

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墓守は、何も言わずにただそこに在った。

評価も、肯定も、否定もない。
夜がそこにあるように、墓守は静かに佇んでいる。

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「……うん」

それ以上の言葉は無かった。
意味を持たない、ただ“聞いた”という気配だけが残る。

カラン。
カンテラが鳴り、青い灯が少しだけ強まる。

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「もう十分だ。
 今夜は、ここまでにしよう」

青い光がゆっくりと広がり、
白い部屋の輪郭をやさしく滲ませていく。
壁も、床も、天井も──境目を失い、夜に溶けていく。

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夜が来る 夜が来る──♪

墓守は小さく歌うように零して、そっとカンテラを傾けた。

灯の中から、夜が零れる。
それは冷たくもなく、重くもなく、
まぶたの裏に静かに降り積もるような闇だった。

意識が、ゆるやかに沈んでいく。
問いも、言葉も、白い部屋も、
すべてが遠ざかっていく。

最後に聞こえたのは、穏やかな声。

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「君に、良い眠りがあるといいね」


カラン。

その音を境に、
あなたは深い眠りへと落ちていく。

——そして瞼を開いた時、
そこはもう、元の世界だ。

ここトイカケはありません。回想や感想を自由に記入したりしなかったりしてください。
Answer
 言葉に、光に、
 今回はこれで終わりなのだと察する。
 
 まだ、黄昏の向こうに、
 夜になどなってやるつもりはないが。
 それはいつか必ず訪れるもの、
 避け得ぬ終焉だ。
 理解しているとも。

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「…………さよなら」

 別れの言葉を告げて──

  ◇

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「………………」

 目を覚ましたら、いつもの執務室──
 ではなくて、自室であった。

 傍らには影がある。
 見慣れた紫色のフード。

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「お目覚めかい、陛下。
 もう昼だぜ〜」

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「…………おはよう、アルカ」

 トイカケが頭の中をぐるぐるしている。
 王の視線は、アルカのフードの首元にある、
 黄昏色のリボンの方、向いた。

 この色は。
 これを意識的に身に付けるお前は。

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「…………また、夢を見たんだ。
 それでアルカに訊きたいことが
 出来たんだけど…………」

 そう、前置いて。

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「アルカは──
 死を、どんなものだと思っている?

 お前は僕に言いました。
 『終末の苦痛を取り払ってやる』と。
 そんなお前が身に付けるは黄昏色。
 その意味を、知らぬ僕ではないのだ。

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「………………」

 アルカの瞳が鋭くなった。
 飄々とした色は消え去り、
 値踏みするように王を見ている。

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「…………確認なんだがよ。
 陛下はアタシを断罪するつもりじゃ
 ねーだろうな?」

 アルカの指が、黄昏色のリボンを撫でた。

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「断罪するつもりなら
 アタシは何も答えねーし、
 今日をもってここを去る」

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「……断罪なんてする訳がないよ。
 私はお前の黄昏色を理解した上で
 “お願い”をして、
 王宮に引き込んだんだから、さ」

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「夢の中で、奇妙な問答をしたんだ。
 それについて、お前の意見も聞きたくてね」

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「……“黄昏の信奉者”に、
 よくそんな問い投げられるよなぁ。
 アタシの色の意味を知っているなら、
 答えなんてもう分かっているだろうによ?」

 アルカが盛大に溜め息をつく。
 でも、語ってくれそうだ。

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「アタシにとって──
 死とは、救いだ」

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「冥界なんて知らねぇよ?
 黄昏の彼方にはさ、ただ
 穏やかなる眠りのみがあるんだぜ」

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「どんな痛みも苦しみも、
 地獄の病も叶わぬ願いも!
 死ねばみぃんなオサラバさ。
 それらから解き放たれるんだ」

 彼女が、“黄昏の信奉者”たる所以。
 彼女にとって、死は。

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「まぁさ、アタシはさ、
 どこぞの影神のように、
 救いだからって強制的に
 死を押し付けることはしねーけどな」
「…………基本的に」

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「でもよ、望まれるならばこのアルカ・ルゥ、
 いつでも死神になってやんよ!」
「…………アンタはそれを望むんだろう、陛下?」

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「…………そうだね。
 その時はよろしく頼むよ、私の薬師」

 己の末路は、分かっているから。
 そしてこの“救い”は、
 死に安寧を見るアルカにしか頼めないこと。

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「…………死ぬのは怖い。
 だけれど私はいつか必ず、
 地獄のような終焉を迎えるだろうから、さ」

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「分かってんぜー、任せな陛下!
 苦しむ前に、終わらせてやるからよ!」

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「…………誰かを“送る”のは、
 アンタが初めてじゃねーんだわ。
 慣れたかねーけどそんな役割についちまうのは、
 “そういう運命だ”って受け入れることにするしかねーよ」

 さて、とアルカが手を叩いた。

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「時刻はまだまだお昼時!
 黄昏にゃ早すぎるぜ、陛下?」

 とりあえずメシだから支度しな、と。
 そのまま賑やかに、何かを隠すように、薬師が部屋を出た。

 それについては、尋ねてはならぬことなのだろう。
 様々な思考は胸の奥。
 シャルティオは、休みの一日を開始した。