言葉に、光に、
今回はこれで終わりなのだと察する。
まだ、黄昏の向こうに、
夜になどなってやるつもりはないが。
それはいつか必ず訪れるもの、
避け得ぬ終焉だ。
理解しているとも。

「…………さよなら」
別れの言葉を告げて──
◇

「………………」
目を覚ましたら、いつもの執務室──
ではなくて、自室であった。
傍らには影がある。
見慣れた紫色のフード。

「お目覚めかい、陛下。
もう昼だぜ〜」

「…………おはよう、アルカ」
トイカケが頭の中をぐるぐるしている。
王の視線は、アルカのフードの首元にある、
黄昏色のリボンの方、向いた。
この色は。
これを意識的に身に付けるお前は。

「…………また、夢を見たんだ。
それでアルカに訊きたいことが
出来たんだけど…………」
そう、前置いて。

「アルカは──
死を、どんなものだと思っている?」
お前は僕に言いました。
『終末の苦痛を取り払ってやる』と。
そんなお前が身に付けるは黄昏色。
その意味を、知らぬ僕ではないのだ。

「………………」
アルカの瞳が鋭くなった。
飄々とした色は消え去り、
値踏みするように王を見ている。

「…………確認なんだがよ。
陛下はアタシを断罪するつもりじゃ
ねーだろうな?」
アルカの指が、黄昏色のリボンを撫でた。

「断罪するつもりなら
アタシは何も答えねーし、
今日をもってここを去る」

「……断罪なんてする訳がないよ。
私はお前の黄昏色を理解した上で
“お願い”をして、
王宮に引き込んだんだから、さ」

「夢の中で、奇妙な問答をしたんだ。
それについて、お前の意見も聞きたくてね」

「……“黄昏の信奉者”に、
よくそんな問い投げられるよなぁ。
アタシの色の意味を知っているなら、
答えなんてもう分かっているだろうによ?」
アルカが盛大に溜め息をつく。
でも、語ってくれそうだ。

「アタシにとって──
死とは、救いだ」

「冥界なんて知らねぇよ?
黄昏の彼方にはさ、ただ
穏やかなる眠りのみがあるんだぜ」

「どんな痛みも苦しみも、
地獄の病も叶わぬ願いも!
死ねばみぃんなオサラバさ。
それらから解き放たれるんだ」
彼女が、“黄昏の信奉者”たる所以。
彼女にとって、死は。

「まぁさ、アタシはさ、
どこぞの影神のように、
救いだからって強制的に
死を押し付けることはしねーけどな」
「…………基本的に」

「でもよ、望まれるならばこのアルカ・ルゥ、
いつでも死神になってやんよ!」
「…………アンタはそれを望むんだろう、陛下?」

「…………そうだね。
その時はよろしく頼むよ、私の薬師」
己の末路は、分かっているから。
そしてこの“救い”は、
死に安寧を見るアルカにしか頼めないこと。

「…………死ぬのは怖い。
だけれど私はいつか必ず、
地獄のような終焉を迎えるだろうから、さ」

「分かってんぜー、任せな陛下!
苦しむ前に、終わらせてやるからよ!」

「…………誰かを“送る”のは、
アンタが初めてじゃねーんだわ。
慣れたかねーけどそんな役割についちまうのは、
“そういう運命だ”って受け入れることにするしかねーよ」
さて、とアルカが手を叩いた。

「時刻はまだまだお昼時!
黄昏にゃ早すぎるぜ、陛下?」
とりあえずメシだから支度しな、と。
そのまま賑やかに、
何かを隠すように、薬師が部屋を出た。
それについては、尋ねてはならぬことなのだろう。
様々な思考は胸の奥。
シャルティオは、休みの一日を開始した。