Chapter06-04

記録者: シャルティオ (ENo. 14)
Version: 1 | 確定日時: 2026-02-11 04:00:00

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あなたの答えを聞いたあと、
墓守はしばらく何も言わなかった。

白い部屋の静けさが、
ほんの少しだけ深くなる。

揺れながらも消えない蒼い灯は、
まるで夜が呼吸しているようだった。

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「“続き”をどう思うかは、
 きっと君がどれだけ死を近くで見てきたかにも
 関係している」

最初の、距離の話とも繋がるだろうねと添えて、言葉を続ける。

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「死は、概念のままでいるうちは扱いやすいものだろう。
 言葉に出来るし、考えとして整理する事も出来る」

カラン。

けれど、と前置くように、
カンテラがと小さく鳴る。

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それが“自分の傍”に立った瞬間──
 死は、途端に重さを持つ

夜色の瞳が、ゆっくりとあなたを見上げる。

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「君は──死を、見つめた事があるかい?

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遠くの概念としてじゃなく、
 自分や、誰かのすぐそばにあるものとして



──あなたは死を見つめた事がありますか?



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「死というものは、
 考えるより先に“触れてしまう”事がある」

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「誰かを失った時。自分の命がほどけかけた時。
 眠りと目覚めの境目で、これはもう戻れないのではないか、と感じた夜」


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「そういう瞬間にね、
 死は概念でも物語でもなくなる。
 そうして死を直視する──それが、見つめるという事だ」


墓守はそこで言葉を切り、
逃げ道を用意するように、穏やかに続けた。

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「嗚呼、勿論。思い出したくないなら、
 無理に答えなくてもいいよ」

Answer
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「………………」

 本当に小さかった頃は、
 死なんて考えたことなかったなと、
 そんなことを思いつつ。

 次なるトイカケには、あぁ、と肯定。

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「…………幼い頃より、
 死は私の身近にあった」

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「その中でも一度、
 本気で、生死の境を彷徨ったことがあった」

 あの激痛を、今も覚えている。
 毒の魔法が暴走して、生きたまま身体が腐り落ちて。
 『たすけて』の悲鳴は母親には無視されて、
 駆け寄ってきてくれたのは次兄だけ。
 あの日、あの時、自分は。

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「黄昏の彼方を見た気がする。
 黄昏の足音を、明確に聞いた気がする」
「あぁ、僕はもう終わるんだって、
 悲しみと悔しさと諦めを抱いて」

 その頃はまだ、地下牢に閉じ込められていた。
 何も成せないままに終わりたくはなかった。
 この命に、生まれたことに、ひとつでも“意味”が欲しかった。

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「間近に迫る死を見つめて──
 黄昏を見つめて。
 生きたいと強く願ったら……
 世界は夜明け色に染まっていた」

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「目を覚ました時、
 兄さんの泣きそうな顔があって。
 生きてたんだな……って、実感、した」

 あの兄があんな顔をしていたのを見たのは、あれが初めて。
 それだけ大切に想われていたんだ。あの頃から。

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「死は私にとっての救いではあるが、
 そうやって死を見つめたからこそ、
 やっぱり私は、生きていたいよ」

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「だから足掻いてやる。
 最後の最期まで」

 青の瞳に、焔は燃えて。