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記録者: 高橋 雪 (ENo. 22)
Version: 1 | 確定日時: 2025-11-27 04:00:00

怖い。

怖い怖い怖い怖い怖い怖い。

心臓が喉から飛び出しそう。
幽霊が出るかもしれない。
サメが襲ってくるかもしれない。

でも、
──誰もいない。

その事実に気づいた瞬間、
恐怖の種類が変わった。

「何かが出てくる」恐怖から、
「私一人しかいない」恐怖へ。

誰も見てない。
誰も笑わない。

「また雪はビビってる」って言ってくれる人も
「大丈夫だよ」って言ってくれる人もいない。

……それが、怖いのに、
どこかで、ほんの少しだけ安心もしてる。

だって、
ここなら失敗してもいい。
泣いてもいい。
誰にも迷惑かけない。

深呼吸。
一度。
肺が震える。
二度。
視界が少しクリアになる。
三度。
震えていた指先が、ほんのわずかに静かになった。

四度目。
五度目。
……六度目で、ようやく声が出た。

「……大丈夫」
自分に、そっと呟く。
「誰も見てないから、大丈夫」

私は震える足で、白い椅子に近づいた。
膝がガクガクしてる。
でも、もう逃げない。

最後に、
駿君がくれた眼鏡を付けて。
大きく、大きく息を吸って、
まるで水の中に飛び込むように、
そっと腰を下ろした。

座面が冷たい。

座った瞬間、
ぽろり、ぽろりと涙がこぼれた。
誰にも見られていないのに、
誰にも気を使わなくていいのに、
こんなに泣けるなんて思わなかった。

クエちゃんが心配そうに見上げてくれたこと。
ハーちゃんが回し車を止めてこっちを見てくれたこと。
駿君が「甘えていいんだよ」って言ってくれたこと。

全部、思い出した。
だから、もう少しだけ、
自分を許してもいいかなって思えた。

そして、私へのトイカケが始まった