Chapter05-05

記録者: シャルティオ (ENo. 14)
Version: 1 | 確定日時: 2026-02-01 04:00:00

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あなたの答えを聞いて、吸血鬼はそっと瞳を伏せた。
その影は短く、すぐにまた赤い光がこちらへ向けられる。

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「“どう測るか”って、結局は相手の行いでも言葉でもなく──
 あなた自身の基準でしか判断できないのよ」

細い指先が自分の胸元を軽く叩く。

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「どれだけ尽くされても、
 “愛されている”と感じない人は感じない。
 たったひと言でも、“愛されている”と確信する人だっているでしょう?」

彼女は小さく笑い、しかしその目だけは本気であなたを観察していた。

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「愛を測る基準って、自分の弱さとか、欲深さとか──
 本当の自分が一番よく分かっている“欠けている場所”
 なのかも知れないわね?」

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「誰にどれだけ満たしてほしいか。
 何を与えられたら安心するのか。
 それが“あなたの愛を測る物差し”になる──とかね」

そこで吸血鬼はふと視線を横にそらし、
真っ白な空間の奥にある、あなたには見えない何かを覗き込むように瞬きをした。

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「……あら。そろそろ終わりみたいね」

「次が最後のトイカケだわ。
 ……あなたにとっての“今回”の、ね」

すっと姿勢を正し、赤い瞳がまっすぐにあなたを捕らえる。
まるで“あなたそのもの”を問うために。

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「ねえ──最後に教えて?
 あなたが望む“愛の行き先”はどこ?

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「あなたが欲しいのは、どんな“結末”の愛?」

──あなたが望む愛の行き着く先は、どこですか?
Answer
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「そうだね……自分の基準でしかないよ」
「愛が分からないなりに、
 理解しようと、人を愛そうと、
 しているつもりではあるけれど」

 自分が周りに向けているそれに対して、
 確固たる自信なんて持てないが。

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「私は……分からない、分からない……よ…………」
「親からですら愛されたことのない私なんだから」
「愛って」「愛なんて…………」

 首を振る。

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「私は差し出さないし、深くを望まない」
「妻に願うのはただひとつ。
 自分の隣で穏やかに
 笑っていて欲しいだけ…………」

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「そんなささやかな願いでも……
 ちゃんと“愛”なのだろうか?」

 分からない、分からないよ。

 最後のトイカケ。
 分からないなりに思考して、
 真摯に、答えを。

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「…………私は」

 “愛”に対しては理想がある。
 それは、子供のおとぎ話みたいなものなのかも知れないけれど。

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「…………大切な人と寄り添い合って、
 穏やかに笑って…………」
「そんな日々が、ずっとずっと
 続けば良いと思っている」

 “愛”とは、優しく穏やかなものであるべきだ。

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「…………私は長くは生きられない」
「それでも、私が死んだ後も、
 大切な人たちには笑っていて欲しい」

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「…………忘れ去られたくはない。
 でも、私のことで過度に悲しんでもらいたくもない」

 抱いたそれは、ささやかな願い。
 胸に宿した燃える理想とは、まるで正反対の。

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「…………そんな結末になったら、
 素敵だと私は思うよ」
「そうだ、そうなんだ、私は」

 “愛”の形、ほんとうの願い。
 望む結末は、ぼくの想いは。

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「ただ、笑っていて欲しいんだ」

 深くは望まないからさ。
 だから。どうか。