Chapter05-03

記録者: シャルティオ (ENo. 14)
Version: 1 | 確定日時: 2026-02-01 04:00:00

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「……自由って、孤独とよく似ているの。
 誰にも触れられないから、何だってできるけれど……
 誰も自分を求めないという事でもあるわ」

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「愛は自由を奪う。でもね、
 愛だけが“そのひとを一人じゃなくしてくれる”」


私の持論だけれどもね、とあなたの答えのあとに告げ、
彼女はその言葉を噛みしめるようにゆっくり瞬きをした。
真っ白な部屋の光が、金髪に柔らかい縁を描き、赤い瞳に深い影を落とす。

吸血鬼は足を組み直し、少し身を乗り出す。
声の高さは変わらないのに、不思議と距離だけが縮まったように感じる。

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「……面白いと思わない?
 誰かを好きになるって、それだけで“前の自分”に戻れなくなるの。
 行動も、選択も、価値観すらも……気付けば誰かの影響で変わってしまう」

ふわりと肩をすくめて、少女は続ける。

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「私はね、愛って“どれだけ差し出せるか”で深さが決まると思ってる。
 時間でも、血でも、名前でも、自由でも、命でも。
 捧げた分だけ、その人はあなたの中に根を張るの」

コン、と椅子の脚が床を叩く。
アマリエはあなたへまっすぐ身体を向け、声を落として問う。

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「だから──あなたはどう?」


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愛のために、自分のどこまでを差し出せる?

──あなたは愛のためにどこまで出来ると思いますか?
Answer
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「…………自由と愛は、
 一緒には得られないのか?」
「自由に生きる大切な人を、
 遠くからそっと見ているだけの、
 そんな愛もあると思ってはいるけれど」

 今の次兄は、フェンドリーゼは、
 そんな形の愛を向けているはずだ。

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「自分が慕う誰かに
 愛を向けられたら、嬉しい。
 その人の為に動きたいと願う」
 その人の為に、自分の感情を揺らす」
「その時点でもう、“自由”ではない?」

 難しいな、と肩を竦める。

 その理論で言うのなら、
 自分の心に傷と痛みを残した次兄のもまた、
 “自由を奪う愛”だったのだろうか?

 思考すればするほど、分からなくなっていく。

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「私はちゃんと……
 誰かを好きになれているのだろうか。
 分からないよ、分からない…………」

 ぶつぶつ、呟きをもらす。

 『親にすら愛されなかった自分が、
 誰かを愛せる訳がない』
そんな思考が、
 無意識のうちに、王の心に根を張っていた。

 そして向けられたトイカケ。
 王の瞳は、惑うように揺れていた。

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「私は……妻の為なら、シャルロの為なら、
 色々と尽くしてやりたいとは思っているよ」
「…………でも」

 分からない、分からない、分からない。

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「私は王だから……立場があるから。
 まずは理想を叶えることが最優先だから。
 妻に差し出せるものにも限りがあるし、
 彼女も献身は望まないだろうし…………」

 声が震える。

 見たくないものを、見そうになった。
 深呼吸して、それを直視した。

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「お前の理論で言うのなら…………
 妻に色々を差し出せない僕は、
 彼女を深く愛していないことになるのかな」

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「親にすら愛されなかった ぼく、じゃ、
 だっ、誰も、愛することは、出来ないのっ、か、な」

 湧き上がる悲哀。
 泣きそうになるのは、どうしてだろう。

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「愛が分からないぼくなりに……
 彼女のこと、愛そうとはっ、してるっ、けど」

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「愛に生きる者である以前に!
 だって私は、王なんだから!

 そればっかりは、譲れない。

 不器用ながらに、妻を愛したいと願う自分だけれど。
 向けられるものには、捧げられるものには、限りがある。

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「そっ、それでもっ…………
 ぼくなりに愛そうとはしているんだ、よ」
「これが僕の愛なんだよ…………」

 声に、力はない。