Chapter06-04

記録者: 桜 かなめ (ENo. 165)
Version: 1 | 確定日時: 2026-01-11 04:00:00

クリックで開閉
あなたの答えを聞いたあと、
墓守はしばらく何も言わなかった。

白い部屋の静けさが、
ほんの少しだけ深くなる。

揺れながらも消えない蒼い灯は、
まるで夜が呼吸しているようだった。

icon
「“続き”をどう思うかは、
 きっと君がどれだけ死を近くで見てきたかにも
 関係している」

最初の、距離の話とも繋がるだろうねと添えて、言葉を続ける。

icon
「死は、概念のままでいるうちは扱いやすいものだろう。
 言葉に出来るし、考えとして整理する事も出来る」

カラン。

けれど、と前置くように、
カンテラがと小さく鳴る。

icon
それが“自分の傍”に立った瞬間──
 死は、途端に重さを持つ

夜色の瞳が、ゆっくりとあなたを見上げる。

icon
「君は──死を、見つめた事があるかい?

icon
遠くの概念としてじゃなく、
 自分や、誰かのすぐそばにあるものとして



──あなたは死を見つめた事がありますか?



icon
「死というものは、
 考えるより先に“触れてしまう”事がある」

icon
「誰かを失った時。自分の命がほどけかけた時。
 眠りと目覚めの境目で、これはもう戻れないのではないか、と感じた夜」


icon
「そういう瞬間にね、
 死は概念でも物語でもなくなる。
 そうして死を直視する──それが、見つめるという事だ」


墓守はそこで言葉を切り、
逃げ道を用意するように、穏やかに続けた。

icon
「嗚呼、勿論。思い出したくないなら、
 無理に答えなくてもいいよ」

Answer
「あるよ」
死は彼女にとって身近な存在だった。
死は影のように彼女にピッタリとくっついていた。

本当は今でもそうなのだろう。
今生きていても明日生きている保証はないのだから。

「でも今は、遠いものとしてみておきたいな」
この世界(過ごしてきた場所)をもう少し眺めていたいから。