Chapter02-05

記録者: 白翅舞蝶 (ENo. 238)
Version: 1 | 確定日時: 2026-01-11 04:00:00

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「ねえ──じゃあさ」

ぱちん。
少年が指を鳴らす。
軽快なくせに、不思議と胸の奥をざらつかせる音がした。

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「“正しい”があるなら……“悪い”って、なんだと思う?

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「君の思う“悪さ”ってさ。どういう形をしてる?
 ……悪い人って、どうして悪い事をすると思う?」

その声は明るいのに、奥底に沈むものは冷たく澄んでいる。
冗談みたいな口ぶりなのに──その実、返答を逃す隙を与えないほど見つめていた。

──あなたは、何をもって“悪い”と判断しますか?


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「僕が新しい曲を吹こうとするとね、
 止めようとする人がいるんだ。すっごく真面目な顔してさ」

笛に指を当て、吹く真似をして。
けれども笛を通して音を出す事はしないで、
また手持ち無沙汰のように笛を手でいじる。

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「親も、偉そうな大人も、見回りの憲兵も、
 神様の言うことばっかり唱える聖職者もね。

 彼らはそれを“正しいこと”だって僕に言うんだよ。
 でもさ、僕の新しい音を止めるんだよ? それってさ──」

そうして。歌う様な声で嗤った。

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〝悪い〟ってことじゃない?

      ──だって僕の方が正しいのだから!

……少年はあなたを見ている。
Answer
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「今度はそう来ますか」


目をパチクリさせる。

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価値観の違い、としか言いようがありませんね。Aから見てBの行動が間違っていた時、Aから見ればBは悪と呼べることでしょう。ですが、これは逆も成り立ちます」


例えば殺人が起きたとする。
悪行を成してやろうとするものの心理状態までは理解し得ないが、大抵の場合はその瞬間だけでも、その殺人が正しいことだと本人は思うからやるのだ。
つまり、正しさが歪み逆転し、周囲の正しさと食い違う訳だ。

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「正しさと言うのは先にも伝えたと思いますが、移り変わり行くもの。そして社会全体の正しさと個人の正しさは全てが一致するものではない。例え一瞬だとしても、それが永続的であったとしても、そこにあるのはただの違い。
この世に絶対的な正しさが無いのと同じように、絶対的な悪も存在しないと僕は考えます」