
「あるよ、幼少期、山で大きな蛇に出会ってね。
僕の記憶の中だととぐろを巻いても僕より遥かに大きかったと思うが、
まぁ、日本にいる大きな蛇は最大でも2m前後だ、きっと幼少期故、盛っているのだろう。
或いは、記憶に留めるべきではない……いや、それは今は良いんだ。
ともかく、その蛇に襲われてね、その時は死を覚悟した。
結局父に助けられて今もこうして生きているが。」
そのときどんな感情を憶えたか、今でも正確に浮かび上がる。
死への恐怖はなく、ただ、生きた喜びと死ねなかった悲しみを同時に味わう不思議な感覚であった。
ん?死への恐怖がないのなら、どうして僕は蛇への嫌悪感を持っているのだろうか?
恐怖したのならトラウマになってもおかしくない、だが、悲しみさえ抱いた僕が……
───いや、どうでもいい。どうでもいいことだ、きっと。