Chapter06-04

記録者: 御守 瑠海 (ENo. 140)
Version: 1 | 確定日時: 2026-01-07 04:00:00

クリックで開閉
あなたの答えを聞いたあと、
墓守はしばらく何も言わなかった。

白い部屋の静けさが、
ほんの少しだけ深くなる。

揺れながらも消えない蒼い灯は、
まるで夜が呼吸しているようだった。

icon
「“続き”をどう思うかは、
 きっと君がどれだけ死を近くで見てきたかにも
 関係している」

最初の、距離の話とも繋がるだろうねと添えて、言葉を続ける。

icon
「死は、概念のままでいるうちは扱いやすいものだろう。
 言葉に出来るし、考えとして整理する事も出来る」

カラン。

けれど、と前置くように、
カンテラがと小さく鳴る。

icon
それが“自分の傍”に立った瞬間──
 死は、途端に重さを持つ

夜色の瞳が、ゆっくりとあなたを見上げる。

icon
「君は──死を、見つめた事があるかい?

icon
遠くの概念としてじゃなく、
 自分や、誰かのすぐそばにあるものとして



──あなたは死を見つめた事がありますか?



icon
「死というものは、
 考えるより先に“触れてしまう”事がある」

icon
「誰かを失った時。自分の命がほどけかけた時。
 眠りと目覚めの境目で、これはもう戻れないのではないか、と感じた夜」


icon
「そういう瞬間にね、
 死は概念でも物語でもなくなる。
 そうして死を直視する──それが、見つめるという事だ」


墓守はそこで言葉を切り、
逃げ道を用意するように、穏やかに続けた。

icon
「嗚呼、勿論。思い出したくないなら、
 無理に答えなくてもいいよ」

Answer
icon
「あるよ、幼少期、山で大きな蛇に出会ってね。
 僕の記憶の中だととぐろを巻いても僕より遥かに大きかったと思うが、
 まぁ、日本にいる大きな蛇は最大でも2m前後だ、きっと幼少期故、盛っているのだろう。
 或いは、記憶に留めるべきではない……いや、それは今は良いんだ。
 ともかく、その蛇に襲われてね、その時は死を覚悟した。
 結局父に助けられて今もこうして生きているが。」

そのときどんな感情を憶えたか、今でも正確に浮かび上がる。
死への恐怖はなく、ただ、生きた喜びと死ねなかった悲しみを同時に味わう不思議な感覚であった。

ん?死への恐怖がないのなら、どうして僕は蛇への嫌悪感を持っているのだろうか?
恐怖したのならトラウマになってもおかしくない、だが、悲しみさえ抱いた僕が……
───いや、どうでもいい。どうでもいいことだ、きっと。