Chapter04-03

記録者: 古閑 茶太郎 (ENo. 1)
Version: 1 | 確定日時: 2026-01-07 04:00:00

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あなたの返答を聞き、魔女の弟子はふんふんと頷いた後に
やや深めに折り目正しく頭を下げた。

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「参考にさせていただきます。
 ……やはりこうやって他人から意見を聴くのはいいですね」

それからある方へと視線をゆるりと動かして、
何かを確かめた様子で頷いた。
あなたが其方を見ても、そこには何も無かったろう。

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「……もう少し問いが必要みたいですね。
 そしたら、……そうだ、さっきも気になった事なんですけれど……」

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「……あなたは、この部屋はどういう目的で
 存在している……と思いますか?


──あなたはこの白い部屋が何故存在していると考えますか?

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「……やっぱり、この部屋が
 ただの“精神世界の一角”とは思えないんです」

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「誰かが意図的に“何もない空間”を作ったとしか思えないんですよね。
 ただ……僕の知る限り、こんな精密で、安定した“無”で、
 しかも異世界とこうも接続を維持できる魔女はいません」

息を呑み、小さく首を振る。
その瞳に、不安とも好奇ともつかない火が灯っていた。

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「この部屋があるのは、仮的にひとを閉じ込めるため?
 知能や能力や思考性格を試すため?
 それとも……僕たちの“反応を見たい”誰かがいる、とか……。

 この部屋、“意図”だけは確かに感じるんです。
 悪意かどうかは分かりませんが……“呼ばれた”感じがする、というか──」

魔女の弟子は少し早口になりかけて、はっと息を整えた。

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「すみません、少し興奮しました……。
 ……あなたはどう考えますか?
 この部屋の“目的”をどう感じましたか?」

Answer
茶太郎は、少しだけ視線を彷徨わせてから、白い床に映る自分の影を見下ろした。
考えているというより、感覚を探っているような間。
脚をバタバタとさせれば、影もゆらゆらと揺れる。
ソレを眺めながら、ゆっくり。水中にある石を拾い上げるように言葉を紡いでいく。

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「正直に言うとさ。
“目的がある場所”っていうより……
最初から、“置いていかれる前提の場所”って感じがするんだよね」

ちいさな呼吸音。そして軽く肩をすくめる。

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「何かをするための部屋、というよりは……
 何もできなくなったひとが、
ひとまず“置かれる”場所、みたいな」


白さを見回して、ぽつりと続けた。

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「考えるしかないでしょ、ここ。
 逃げ場も、役割も、次にやることもなくて。
 ……残るのは、自分が何を考えてるかだけ」

一度言葉を切って、少しだけ声を落とす。

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「だから試験、っていうのとも違う気がする。
 “試されてる”ってより……
 "隠してきた考え"だけが剥き出しにされる場所、っていうか」

弟子の方をちらりと見て、首を傾げた。

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「誰かが反応を見たい、っていうのは……うん、分かる気がする。
 でも、悪意とか好奇心だけじゃなくてさ」

ほんの一瞬、真顔になる。

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「……『それでも、ここで何かを考え続けるか』
 それを見たい場所なんじゃないかな、って思った」

また、照れたみたいに笑う。

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「…ほら、僕ね。
 放っとくと、永久に自問自答しちゃうタイプだから……
 だれかから問いを与えられて、区切られた時間でソレに答えて。
 終われば、おしまい。
 どんなに苦しくても、次のトイカケになったらリセットしてもらえるから」


白い部屋に、冗談とも本音ともつかない言葉が落ちる。
返事はない。
けれど、否定されなかったことだけは、分かった。

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「この部屋は……
 “まだ終わってないひと”を、終わらせないための場所。
 ……そんな気が、する
 
 少なくとも、僕にとっては。
 この部屋は、そう働いてるとおもう」