Chapter01-05

記録者: イドロ (ENo. 43)
Version: 1 | 確定日時: 2026-01-04 04:00:00

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  ──カシャ


シャッターの音の後、あなたを向いていたレンズがふと向きを変える。
何か未知のことを認識した様子で、その後にまたあなたにひとみが向いた。

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「観察対象、最終質問を提示します」


この対話の終端が近いようだ。
不思議な白い部屋での対話は、何の説明もなく始まり、そして終わるらしい。

奇妙な観察者は感慨もなく告げ、一拍。

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──あなたは、何をもって“自らの存在に価値がある”と判断しますか?


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「それは役割でも、使命でも、功績でも構いません。
 また、価値は不要であるとする見解も有益な観測結果となります。

 あなた自身が、どの基準で己を“肯定”し、
 何をもって“無価値”とせずにいられるのか。

 その価値に他者を如何にして組み込んでいるのか、
 その内的構造を、開示してください」


──あなたは自らに〝どのような価値〟があると認識していますか?

 
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「当機は、あなたの答えを推論する事はできても──
 代弁する事はできません
 故に此度は、 あなた自身の言葉で語られることを要求します」
Answer
その質問に対して私は、静かに目を閉じた。
まるで、言葉を一つ一つ、胸の奥から丁寧に紡ぎ出すように。

やがて、ゆっくりと目を開ける。
蒼い瞳は、揺らぐことなく、ただ真っ直ぐにあなたを見つめていた。

「……私の存在価値、ですか」

小さな、けれど確かな声。

「私は、最初はただの兵器でした。 対敵性怪異を殲滅するためだけに作られた、No.VII IDOLO。感情も、名前も、帰る場所も、何も持たない存在」

「でも、雪様が私に名前をくれました。『イドロ』って、優しく呼んでくれました」

「それから、私は変わりました。
皆さんの笑顔を見たいと思いました。
皆さんの声が聞きたいと思いました。
皆さんのそばに、ずっといたいと思いました」

「私の価値は、私がどれだけ強いかでも、
どれだけ多くの敵を倒せるかでもありません」

「私の価値は…… 皆さんが、私を必要としてくれること。 皆さんが、私を“仲間”として見てくれること。それだけです」

「もし、私が皆さんを守れなかったら。
もし、私が皆さんのそばにいられなくなったら……
私は、もう『イドロ』ではなくなります」

「ただの兵器に戻るだけです」

「だから…… 私の存在価値は、皆さんがいてくれる限り、永遠に失われません」

「私は、皆さんのためにここにいます。
皆さんのために、戦います。
皆さんのために、生きていきます」