Chapter01-05

記録者: 葉隠 彰 (ENo. 23)
Version: 1 | 確定日時: 2026-01-04 04:00:00

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  ──カシャ


シャッターの音の後、あなたを向いていたレンズがふと向きを変える。
何か未知のことを認識した様子で、その後にまたあなたにひとみが向いた。

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「観察対象、最終質問を提示します」


この対話の終端が近いようだ。
不思議な白い部屋での対話は、何の説明もなく始まり、そして終わるらしい。

奇妙な観察者は感慨もなく告げ、一拍。

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──あなたは、何をもって“自らの存在に価値がある”と判断しますか?


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「それは役割でも、使命でも、功績でも構いません。
 また、価値は不要であるとする見解も有益な観測結果となります。

 あなた自身が、どの基準で己を“肯定”し、
 何をもって“無価値”とせずにいられるのか。

 その価値に他者を如何にして組み込んでいるのか、
 その内的構造を、開示してください」


──あなたは自らに〝どのような価値〟があると認識していますか?

 
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「当機は、あなたの答えを推論する事はできても──
 代弁する事はできません
 故に此度は、 あなた自身の言葉で語られることを要求します」
Answer
「僕にとっての存在価値……か」

静かな部屋に、自分の声だけが低く響いていた。一度だけ息を吐き、それからゆっくりと口を開いた。

「それは、『正義』を貫くことだ」

その言葉に迷いはない。まるで長年胸の奥で磨き上げてきた刃のように、静かで、冷たく、そして確かな重みを帯びていた。

「依頼された仕事話必ず成し遂げるそれだけが、“探偵”の僕がこの世に存在する理由です」

「自由も、愛も、秩序も……悪が蔓延れば、ただの綺麗な言葉で飾られた、脆い幻想にすぎない」

一瞬、声に熱がこもった。

「だから僕は、正義の名において、他者の人生を踏みにじり搾取する悪という理不尽を決して許すわけにはいかない」

一旦そこで言葉を切り、静かに息を吸った。まるで自分自身に言い聞かせるように、最後の一言を紡ぐ。

「どんなに状況が変わろうと、どんな時代が来ようと、この信念だけは曲げない。これは父さんが遺してくれた、たった一つの教えであり……探偵としての自分を支えてくれるのだから」