Chapter01-05

記録者: 高橋 雪 (ENo. 22)
Version: 1 | 確定日時: 2026-01-04 04:00:00

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  ──カシャ


シャッターの音の後、あなたを向いていたレンズがふと向きを変える。
何か未知のことを認識した様子で、その後にまたあなたにひとみが向いた。

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「観察対象、最終質問を提示します」


この対話の終端が近いようだ。
不思議な白い部屋での対話は、何の説明もなく始まり、そして終わるらしい。

奇妙な観察者は感慨もなく告げ、一拍。

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──あなたは、何をもって“自らの存在に価値がある”と判断しますか?


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「それは役割でも、使命でも、功績でも構いません。
 また、価値は不要であるとする見解も有益な観測結果となります。

 あなた自身が、どの基準で己を“肯定”し、
 何をもって“無価値”とせずにいられるのか。

 その価値に他者を如何にして組み込んでいるのか、
 その内的構造を、開示してください」


──あなたは自らに〝どのような価値〟があると認識していますか?

 
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「当機は、あなたの答えを推論する事はできても──
 代弁する事はできません
 故に此度は、 あなた自身の言葉で語られることを要求します」
Answer
その質問に対して私は、膝の上で静かに指を絡め、少し俯き加減で語り始めた。出す声は小さく、でもどこか確かな響きを帯ていた。

「私の価値……ですか」

一瞬、言葉を探すように息を吸って、それからゆっくりと顔を上げた。瞳に揺れるのは、昔の自分を思い出すような、ほんの少しの痛みと、それでも確かに温かい光。

「私の価値は……『自分の居場所を、ちゃんと自分で守ること』なんだと思います」

「昔の私は、誰かに必要とされることでしか、自分がここにいていい理由を見つけられなかった。誰かが優しくしてくれるから、私もここにいていいんだって、そう思ってた」

「でも……駿君や、みんなと過ごすうちに気づいたんです。私が誰かを必要とするのと同じくらい、誰かが私を必要としてくれてるってこと。そして、私自身が、私を必要としてあげてもいいんだってこと」

「だから今は、誰かのために無理をしてまで自分を削るんじゃなくて、自分の気持ちをちゃんと大事にしながら、それでも誰かのそばにいたいって思えるようになった」

「逃げたくなる時もあるし、怖くなる時もあるけど……それでも、私は私のままで、みんなのそばにいたい。私の居場所は、誰かに与えられるものじゃなくて、私が選んで、守っていくものなんだって、そう思えるようになったんです」

最後に、恥ずかしそうに小さく笑って。

「……まだ、うまくできてるか自分でもわからないけど。この気持ちだけは、絶対に譲れないんです」