Chapter01-05

記録者: 白翅舞蝶 (ENo. 238)
Version: 1 | 確定日時: 2026-01-04 04:00:00

クリックで開閉

  ──カシャ


シャッターの音の後、あなたを向いていたレンズがふと向きを変える。
何か未知のことを認識した様子で、その後にまたあなたにひとみが向いた。

icon
「観察対象、最終質問を提示します」


この対話の終端が近いようだ。
不思議な白い部屋での対話は、何の説明もなく始まり、そして終わるらしい。

奇妙な観察者は感慨もなく告げ、一拍。

icon
──あなたは、何をもって“自らの存在に価値がある”と判断しますか?


icon
「それは役割でも、使命でも、功績でも構いません。
 また、価値は不要であるとする見解も有益な観測結果となります。

 あなた自身が、どの基準で己を“肯定”し、
 何をもって“無価値”とせずにいられるのか。

 その価値に他者を如何にして組み込んでいるのか、
 その内的構造を、開示してください」


──あなたは自らに〝どのような価値〟があると認識していますか?

 
icon
「当機は、あなたの答えを推論する事はできても──
 代弁する事はできません
 故に此度は、 あなた自身の言葉で語られることを要求します」
Answer
最後の問いだと言う。
問われたそれに、僕は笑った。

icon
「僕の価値、ですか。
きっとそれは、生きていることですね」

icon
「僕の世界は既に終焉を迎えている。誰にも記憶されることもなく、何かをなしたこともなく、”そこにある”という事実だけを残して活動を終えた」

icon
「ですが、誰にも認識されることのないそれは、存在しないのと同じこと。もう、どこにもないのと同じこと。シュレディンガーの猫にすら、ならないのです」

icon
「それはきっと、とても悲しいことです。寂しいことです」


なんでか珍しく、熱く語っている自分に気がつく。

icon
「だけれども、僕がいます。たしかにあの世界で産声を上げ、あの世界で生きた者がここにいます。僕が記憶している。僕が訪れている。だから、そこにあることは、あったことは確かなのです」


ギュッと拳を握りしめた。

icon
「僕の価値は生きていること。生きることであの世界は確かにあるのだと証明し続けること


断言する。
世界の存在証明
それが、僕の価値で使命だと。

icon
「そういうことに、しておいて下さいな」


最後は苦笑いで逃げてしまう。
柄にもないことを、してしまったものだ。