Chapter06-01

記録者: Πολύτιμος λίθος ρουμπελίτης (ENo. 204)
Version: 1 | 確定日時: 2026-01-04 04:00:00

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あなたがふと気が付けば、真っ白な部屋に居た。
そこには椅子がひとつ置いてあるだけで、他に何もない。

相も変わらない様子の白い部屋には
いつも通り椅子が一つだけ。
座らずとも、答えずとも、あなたが望めば元の場所には戻れよう。
もし座るのならいつも通り──壁が開けて、〝向こう側〟に姿がひとつ。

そこにいるのは──人型ではあったが、どこか人らしくないものだった。
白い部屋の中、静かに座っているその姿は真っ黒な影法師のよう。
人では無く、どこか──夜そのものがそこに居るような、そう思わせる姿であった。

奇妙なものではあるが、それはきっとあなたを恐れさせるものではなく、
どこか安心感のあるものに感じられるのかもしれない。

夜空に月が浮かぶように真っ白な顔、
あなたの事をじっと見据えるひとみは夜の色。
驚く様子も慌てる様子も無く、そこに静かに在った。

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「やあ。いい夜だね」

中性的な声は響かず静かなもの。
あなたの言葉を待つように暫くじっとあなたを見詰めた後に、
ややわざとらしく、人間を模すように首を傾げる。
今までの問い人と同様、あまりあなたの事を正確に認識出来ていないのだろう。

とはいえ、ソレにとってその事はさして問題ではないらしい、
様子を窺った後、まっくろな口を開く。

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「コレはどうやら君に問い掛けるために呼ばれたらしい。
 ──ひとまずコレの事は『墓守はかもり』と呼んでくれればいいよ。
 本来は眠りたい子を眠らせるためのものなのだけどね」

コレ、というのは恐らく一人称であるのだろう。
墓守を名乗ったその影は、区切るようにカランと音を鳴らす。
手に持った銀色のカンテラの音のようだった。
枯木の意匠のカンテラに、青い光が点っている。

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君にとって死は、どれぐらい遠いものだろう?

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「ずっと遠くの終着点にあるものだろうか。
 いつでも首筋に感じるものだろうか。
 それとも、毎夜のように訪れるものだろうか」


──あなたにとって死とはどれぐらい遠いものですか?
Answer
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「今回は答えやすいですね。さて…前回呼ばれた時は貴方に語ってもらいましたから、私がお答えすることにしましょうか」

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「私の種族は、種の存続をとても大切にしています。そのため、同族が消滅しないようにと、コミュニティを形成し、そのためのすべを整えてきました」

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「消滅さえしなければ、私たちは精霊…朽ちる肉体を持たない種族です。それゆえに何百年、何千年とそこに居ることもできます。
ただ、肉体がないがゆえに、消滅に抗うことは難しく、なかなか自分では消滅を防ぐことが難しいのです」

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「在り続けられる環境であるならば、ずっとそこに存在できます。ただそれが叶わなくなった時、その場所の変化とともに消滅してしまいます。
ですから私たちは、環境を変えて生き延びるために、その世界から旅立つ方法を見つけました」

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話を聞きながら、静かに口を開く。
「僕は……今は人間の彼女とともにいるから、彼女が消える時が来るのは怖いよ。ただそういう生き物だと思ってる」

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「自分よりも…と言ったら彼女には複雑な顔をさせてしまうかもしれないけど」

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「貴方は…なんというか…以前から真っ直ぐではありましたが…」

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「ん?なに」

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「本当にお嫁さんのことが大好きなんですね、貴方の世界の全てであるかのような、ことを言いますから」