Record

記録者: 夏揺 響 (ENo. 56)
Version: 1 | 確定日時: 2025-11-27 04:00:00

ある世界、ある場所。
巨大な昆虫たちを祖にする亜人、蟲人の国家「蓼食」という国があった。

虫の因果かなにかか、
隣に座す鳥人の国は執拗にこの国を、住人を狙い続けた歴史がある。
そして難儀なことに、祖先が虫であるからこそ
蓼食の者は大きな翼に慄く本能を持っている。

けれど討って出れぬ訳ではない。
鳥人には翼あれど生来腕がない。
蟲人たちはその点、翅と腕を両立し、
空の上で、時には地上で武器を、道具を扱えた。

それに加え、肉食の昆虫を祖とするものは
絶大な戦闘力を誇る一族とされるものが多かった。
だがしかし、良いところだらけとはいかぬのが世の常。
肉食の昆虫たちはあまりに我が強く、
彼らだけで組織的に動くことはできなかった。

だからこそ稀なる才は必要だった。
もともとは肉食に非ず、それでいて高名な武芸家の跡取りであり
軍部に身を置き、働くことを幸福と感じるような
統率の才を持つ「炎天の将」は。

icon
「……はあ」

その「炎天の将」こそこの蝉の青年、夏揺響。
が、まあ稀なる才である以上負担は大きい。
激務に次ぐ激務だ。
他にこなせる人員が少なすぎる故疲労は否応なく溜まるもの。
icon
「流石に少しだけ……仮眠、取るか」

むしろちょっとは仮眠を取らないといけないくらいには
この蝉、自然に仕事中毒をやらかしている。

大佐という立場から
敵襲に備えるため滅多に武装を外すことはないが、
今このときくらいは。そう思いほぼすべて武装を外して
少しだけ、と瞼を閉じる。
少し経てばまた、仕事が始まる。
別に嫌ではない。当たり前の、己の誇りなのだから。

そのはず、だったのだ。