あなたがふと気が付けば、真っ白な部屋に居た。
そこには椅子がひとつ置いてあるだけで、他に何もない。
相も変わらない様子の白い部屋には
いつも通り椅子が一つだけ。
座らずとも、答えずとも、あなたが望めば元の場所には戻れよう。
もし座るのならいつも通り──壁が開けて、〝向こう側〟に姿がひとつ。
そこにいるのは──人型ではあったが、どこか人らしくないものだった。
白い部屋の中、静かに座っているその姿は真っ黒な影法師のよう。
人では無く、どこか──夜そのものがそこに居るような、そう思わせる姿であった。
奇妙なものではあるが、それはきっとあなたを恐れさせるものではなく、
どこか安心感のあるものに感じられるのかもしれない。
夜空に月が浮かぶように真っ白な顔、
あなたの事をじっと見据えるひとみは夜の色。
驚く様子も慌てる様子も無く、そこに静かに在った。

「やあ。いい夜だね」
中性的な声は響かず静かなもの。
あなたの言葉を待つように暫くじっとあなたを見詰めた後に、
ややわざとらしく、人間を模すように首を傾げる。
今までの問い人と同様、あまりあなたの事を正確に認識出来ていないのだろう。
とはいえ、ソレにとってその事はさして問題ではないらしい、
様子を窺った後、まっくろな口を開く。

「コレはどうやら君に問い掛けるために呼ばれたらしい。
──ひとまずコレの事は『墓守』と呼んでくれればいいよ。
本来は眠りたい子を眠らせるためのものなのだけどね」
コレ、というのは恐らく一人称であるのだろう。
墓守を名乗ったその影は、区切るようにカランと音を鳴らす。
手に持った銀色のカンテラの音のようだった。
枯木の意匠のカンテラに、青い光が点っている。

「君にとって死は、どれぐらい遠いものだろう?」

「ずっと遠くの終着点にあるものだろうか。
いつでも首筋に感じるものだろうか。
それとも、毎夜のように訪れるものだろうか」
──あなたにとって死とはどれぐらい遠いものですか?