Chapter07-fin

記録者: フェルヴァリオ (ENo. 64)
Version: 1 | 確定日時: 2026-01-04 04:00:00

クリックで開閉
あなたの言葉を最後まで聴いて、
その魔女は口元の笑みをゆっくりと深めていた。
吊りあがった弧状はかえって不気味にも見えただろう。
それからぱっと目元も弧状を描き、
あなたが否定をせど肯定をせど、うんうんと頷いた。

ふ、と部屋の端が溶けて行くのが見える。
あなたはもう知っているだろう、
今回のトイカケはこれで終わりなのだと。
魔女もそれを察したのか、あなたにまた視線を戻してにっこり笑った。

icon
「ふふっ、今日は楽しかったわ~~!
 今日の事はしっかり覚えておくわね~~~!」

声は軽やかで、笑い声さえ含んでいるのに、どこか底知れぬ影を帯びている。
立ち上がろうと床に着けられる脚は、蜘蛛の足先のようでもあった。

icon
「またいつか、貰いに行くから────」


次の瞬間、魔女の姿は白い部屋の空気に溶けるように、ふわりと消えていた。
……あなたも気付けば元の場所に戻れるのだろう。


ここトイカケはありません。回想や感想を自由に記入したりしなかったりしてください。
Answer
icon
「ふふっ、今日は楽しかったわ~~!
 今日の事はしっかり覚えておくわね~~~!」

 声は軽やかで、笑い声さえ含んでいるのに、どこか底知れぬ影を帯びている。
 立ち上がろうと床に着けられる脚は、蜘蛛の足先のようでもあった。

icon
「またいつか、貰いに行くから────」

 言い残して、白い部屋の空気に溶けるように魔女は、ふわりと消えていた。
 姿を追う間もなく、世界がゆっくりと裏返る。







 カチャリ。
 小さなガラス瓶が、軽く響いた。
 液体が揺れるたび、透明な瓶の中で光がちらつく。

 フェルヴァリオが跳ね起きて、肘がフラスコに当たりかける。

icon
「……っ、あぶな」

 指先で慌てて支え、割れなかったことに小さく息を吐く。

icon
「ふあー……よく寝た」

 いつもの自分の工房。
 薬草の匂い、煤のついた机、未洗いの器具。
 夢の余韻が、まだ舌の奥に残っている。

 今までの問いかけに比べれば、とても簡単だった。
 趣味。好きなこと。夢。
 そして現実。

 
icon
「……うっ。まだ、こんなにあるのか……」

 机の上の依頼書を前に、つい声が出る。
 指で1枚ずつめくりながら、片付けなければならないことを噛み締めた。

 効能。
 納期。
 対価。

 頭の中で手順を組み立てながら、棚に視線を走らせる。

 材料の在庫、問題なし。
 足りないものは、昼までに仕入れればいい。

 窓の外に目を向ける。
 夜の名残が空に漂い、朝日はまだ遠く、灰色の光が静かに広がっていた。

icon
「なら……」

 炉の前に立ち、薪を組んで、火を焚べる。
 ぼっ、と静かな炎が立ち上がる。
 フェルヴァリオはフラスコを手に取り、いつもの位置に戻した。

 夢の続きを考える暇もなく、世界は今日も、きちんと回っている。
 それでいい、と彼自身が一番よく知っていた。