Chapter04-01

記録者: 新庄 瞳 (ENo. 201)
Version: 1 | 確定日時: 2026-01-04 04:00:00

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あなたがふと気が付けば、真っ白な部屋に居た。
そこには椅子がひとつ置いてあるだけで、他に何もない。

変わらぬ様子のその部屋の、ただひとつの椅子に腰を掛けると。
……掛けても。
視界の先には相変わらずの壁があるだけだ。
あなたが訝しんで壁を見ているだろううち──不意に

壁がひらけて、今しがた座っただろう人と目が合った。

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「うわっ、人がいる?!」

中性的な外見をした男性は、ぱちぱちと目を瞬いた後
壁があったろう辺りを確かめるように視線を移し、
それからまた改めてあなたへと目を向ける。

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「すみません、失礼ですが……ここ、精神界の簡易領域……ですか?
 ……いや、違う……にしては安定しすぎてるな……

大人というにはあどけないその人は、
訊ねておきながらぶつぶつと思考を整理するような呟きを続けて、
それから問いを擲ったことに気付いてはっとした顔で頭を下げた。

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「ああ、すみません……こういう現象は初めてでは無くて。
 でも僕が知っているのと根本が違うようなそんな気が……、
 というのはいいんでした。ええっと、あなたも巻き込まれた側……?」

まじまじとあなたの姿を見詰め、きっとあなたが頷くなりの反応を返した後、
うんうんと頷いて、それから軽い咳ばらいをした。

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「……そしたら、少し情報共有しておきますね。
 僕は『余白』の魔女の弟子、アルヴェンです。
 寝たと思ったらこの空間に居て、椅子に座ったらあなたが急に現れて……」

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「それで……僕からは、何故かあなたの姿がはっきりと見えないんです。
 ぼんやりしているというより、幾重にも形が重なっているような……そんな風に見えるというか。
 声もそうですが、一応意思疎通は出来なくは無さそう……ですね。
 ……あなたからもそう見えてるんですかね……」

トイカケをする側からはそう見えていたのだろう。
どこか会話が噛み合わない事もあるのかもしれないが、
それはこの部屋の性質も相俟ってか。

それから彼は、どこか居心地が悪いような、
申し訳ないように眉根を下げて首を傾ぐ。

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「それで──あなたもなのか分かりませんけれど、
 なんだか……あなたに問い掛けなければならないような、そんな気がしてくるんです」

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「こんなはっきり相手も見えてない状況で話を聞けなんて、
 失礼でしょうに、まったく……一体何考えてるんでしょうね……

長い溜息をひとつした後、魔女の弟子は改めてあなたを見た。
目の隠れがちな前髪がさらりと揺れた。

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「……あなたは、この白い部屋をどう思いますか?


──あなたは、この白い部屋にどんな印象を抱きますか?

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「あっ、そんなに難しく考えなくて大丈夫です。
 もっと直感的な印象というか、感覚的なものでいいというか……」

あなたの回答が返る前に、わたわたと魔女の弟子は手を振った。

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「何も無さ過ぎて落ち着かないとか、
 むしろ落ち着くというか、そんな感じの話でよくて……」

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「僕だったら──そうですね……。
 何も無くて、ぼんやりとした知らないあなたしかいない空間……。
 危険が無い事は直感できて、ある意味、穏やかな……。

 本来の自分の役目や立場から解放されたような、……
 ……解放感よりも、不安……のが強いかも知れません。」

思考の順路をパンくずを落とすように零した末、
辿り着いたものに納得したように頭を縦に振る。

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「──嫌いでは無いけれど、じんわりとした不安がある。
 この部屋、この空間に対して思うのは、僕はそんな感じかも知れません。
 少し話をしたら、変わるかも知れませんがね……。

 ……あなたはどうですか?」

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ふと、目が覚めたらまた、そろそろ見慣れ始めた景色で。
なんだか胸の中がぐちゃっとしていて、絶妙に落ち着かないそんな心を、無理やり押さえつけて。
ふっと現れたあなたに、目をやって、長々と並べられる言葉に、頭を痛くしながら耳を傾けていた。

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ひとみん
「せ、精神界の…なんて?わからんけどまあ…似たようなもん、なんじゃないか…?」

自分がここへ来る時、決まって意識が飛んでいる時だから、そうじゃないかと仮定した。
まあ、彼の云々かんぬんは正直わかったものではなかったが…
とりあえずそう返した。彼の自己紹介も聞いたことだし、このままこっちの自己紹介も挟んでいくか、と、再び私は口を開く。

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ひとみん
「アタシは瞳。新庄瞳しんじょうひとみだ。親しい人からはひとみん、とか呼ばれてる。」

何回目かの自己紹介をしつつ、この形式の問答にもやっと慣れてきたかな、とか、考えたり。

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ひとみん
「えーと、この白い部屋をどう思うか、だっけ………」

この部屋に来るのも、たぶんもう3.4回目ぐらいだろう。
そんな中でどう思うか、なんて言われてもなあ、と、私はこの部屋に対して抱いた感情、感覚、感想なんかを思い出していた。

ここに来ることになったきっかけ、とか、あるのかな。
あいつが逝ってしまったあとなのは確実、なんだろうが………それ以外はいまいち、原因も要因もわからない。

いや、そんなことはいまは関係ないだろう。今の質問はこの部屋について、だ。

この部屋について、か。ちゃんと考えたことってなかったかも。
この部屋は、見渡す限り白くて。
それでいて、知ってるような、知らないような空気が混ざった匂いがして。
何て言うか………

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ひとみん
「来たことあるようで無いところ、かな。」

そんな感想だった。この空間は知らないもの、だけれど。匂いが、空気が、なんだか知っているようなそんな気がして。

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ひとみん
「あと、来たら質問される場所、ね。」

これは、本当に率直で、かつ私がここに来るのがはじめてでない、ということを暗に示したつもり。
率直と言えば、この2つしかないかな、と。

あんまり淡白すぎるのも、向こうにとって失礼だろうか。
もう少し掘り下げた方がいいかもな、なんて思って、聞かれてもいないのに口を開く。

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ひとみん
「詳しく言うなら…なんだろう、安心と不安が混ざった感じの空気…って言うのかな。緊張感とゆるさの中で問答を繰り返すような…そんな感じ?」

いざ形容してみると難しいな、と、彼の文章の形成力に驚いて。

スルスル出てくるなら、いつもこう言うふうに、色んなことを形容して話してきてるんだろうな、と。
そんなめんどくさそうなことよくするな、なんて思いつつも、これ以上特に答えることもないし、そのまま私は次の質問を待った。