Chapter03-fin

記録者: シャルティオ (ENo. 14)
Version: 1 | 確定日時: 2026-01-04 04:00:00

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あなたの話を聞き終えて。
変わらぬ体勢と手の仕草のまま、女はふっと笑った。
その笑いは小さく、肩の力を抜いたような、けれどどこか柔らかい余韻を含んでいる。

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「……うん。なんかちょっと、
 スッキリしてきたかもな」

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「とかまー……うだうだ考えても、
 結局変わらない毎日がまた続くんだけど、さ。
 こうやって……無益かも知れなくても、考える事って、やめちゃ駄目かもなって思うんだ」


手元で絡めた髪をそっとほどきながら、軽く肩をすくめる。
視線は遠くに漂わせつつも、ほんのわずかにあなたのほうを向いている。

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……ここまで話して、完全にウチの妄想だったとかだったら
 恥ずかしいな……。ま、いっか


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「あー……そろそろ目が覚める気がする。
 じゃーね、クロ。またどっかで会えたらいーね」


ふあ、と女が欠伸をひとつしたのに合わせて、あなたの視界もぼやける。
まるで風に吹かれるように、白い空間の輪郭が溶けていく。
重みに耐えかねてひとつ瞬きをした後には、もうそこに人の姿は無かった。

それで、次に瞬きした後には。
あなたはあるべきところに戻っていたのだろう。

ここトイカケはありません。回想や感想を自由に記入したりしなかったりしてください。
Answer
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「…………私の返した色々が、
 お前の歩む道の支えになれたら幸いだよ」

 あぁ、また、と一礼。

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「…………迷える君に、
 運命の女神の加護のあらんことを」

 小さく祈り、意識は現実へ────。

  ◇

 気付けばいつもの執務室。
 目の前。王宮魔導士のひとりがいた。

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「…………陛下?」

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「…………夢を見ていたんだ、
 気にしないでくれ」

 頭を振る。
 君にもひとつ、トイカケを投げても良いかな。

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「いきなり尋ねて悪いんだが…………」
「シルヴィレントは、
 変わろうと思っているのに
 どうしても変われないこととか、
 そんなこと、あるか?」

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「……そんな夢でも見られたんですか?」
「…………私は」

 紫の瞳に、憂いが灯る。

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「……陛下は、数年前にアルヴァンテの家で
 起きた事件をご存知ですか」
「私の可愛い妹が、
 非魔法民に惨殺された事件を」

 己に仕える王宮魔導士たちの情報は集めている。
 だから。知っている、と王は返した。

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「…………そうですか。
 それならば話が早いです」

 あの頃の私は弱かったんです、と
 若き王宮魔導士は語るのだ。

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「自分の弱さに甘んじて……
 それで良いと思っていました。
 だから私は努力を怠り、弱いまんまで」

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「…………そんな私の目の前で、事件は起きた」

 紫の瞳は、暗い。

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「…………私が変わろうと思ったのは、
 全てが手遅れになった後です」

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「私がちゃんと努力さえ積み重ねていれば、
 これは確かに防げた悲劇だったのに」

 ですから、と王宮魔導士が続ける。

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「陛下がそのようなことで
 悩んでおられるのでしたら…………」
「手遅れになる前に動くべきだと考えます」

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「…………参考になったよ。
 いきなり変なこと聞いて済まないね」
「辛いことも思い出させてしまったようだ」

 過去のことですから、と
 シルヴィレントが首を振った。

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「…………それで、話の続きですが。
 陛下がお疲れのようならば、
 また後日、伺いますよ?」

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「…………いや、構わない。続けてくれ」

 トイカケ。回答。
 思考の端に転がしながら。
 王はいつもの執務に戻るのだ。