Chapter03-05

記録者: シャルティオ (ENo. 14)
Version: 1 | 確定日時: 2026-01-04 04:00:00

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あなたの言葉に黙って頷きながら、
思考を深めるように髪を弄る手の動きは止まっていた。

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「……価値、なんて偉そうな言葉を使ったけどさ」

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「結局、自分がその生き方で満足できるかどうか
 みたいな話、な気もしてくるね」

短く言葉を切りながら、息を吐く。
沈黙は、ただ心の中を整理する時間のようだった。

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どうすれば、満足って思えるんだろうね

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「もちろん、簡単に“ああ、これで満足!”って思えれば楽なんだけど……
 現実はさ、どんどん次が出てくるし、思い描く理想と現実の間に隙間があって……」

小さく肩をすくめ、思い出したかのようにまた手が髪を弄った。

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もうこれでいいって思える瞬間……、
 クロは、経験ある?……どうすれば自分が満足できるかって、分かる?」


──あなたにとって“満足”とは何だと思いますか?

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「……“満足”って多分、別にゴールじゃないんだよね」

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「結局“ああ、今ここで自分のやりたいことできてるな”って瞬間のこと……なのかも。
 誰かに褒められたり、認められたりすることだけじゃなくて、
 ただ自分の心が納得してるっていうか」

髪を指先で絡めた手をそっと下ろし、視線を落とす。

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「だから、ウチにとっての満足って、“ずっと続くもの”じゃなくて、
 小さくて短いけど、自分の心にちょっと灯がともる瞬間のこと……かな、と思う。
 其れを積み重ねられる可能性が高い行為を、価値、と呼べるのかもなぁ……」

軽く息をつき、椅子にもたれて肩の力を抜く。
ふ、と視線があなたに戻り、問いかけるように目が揺れる。

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「クロはさ……そんな瞬間、ある?
 自分の中で、これでいいって思える瞬間って、どうやったら掴めると思う?」

Answer
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「満足…………」

 己のこれまでを思い返す。
 牢に繋がれていた時期が長かった。
 彼が“王”になったのは、最近の話。

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「私はそんな経験、ないし…………」
「…………経験する前に、死ぬのだろうよ」

 遠く。黄昏の足音が聞こえている。
 それはまだ遠いが、そう遠くないものだ。
 己はきっと、老いる前に死ぬからさ。

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「私は…………
 王としてこれまでやってきたことが、
 報われて欲しい」

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「私の長い改革が全て終わった時、
 その時はようやく“満足”を抱ける?
 しかし、片付けるそばから問題が出てくるしな…………

 魔導王国に潜む病魔は、根深い。

 だから。だから。たぶん。

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「…………民からの笑顔を見られたのなら。
 民から王への感謝の言葉を聞けたなら」
「その時は…………きっと」

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「……この改革に、意味があったと思える。
 小さな満足感と達成感を得られるはずさ。
 大きな目標は果たせずとも、ね」


 思考しながら、言葉を紡ぐ。

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「そんな小さな達成では、
 “もうこれでいい”にはならない。けれど、
 “これまでこの道を歩んできて良かった”には
 なるのだろうさ」

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「…………そう。
 ちょっと灯がともるのさ。
 そんなことの積み重ねがいつか、
 大きな灯火になると信じているよ」

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「そのように
 小さな達成を重ねていったら…………
 いつの日か、
 “もうこれでいい”になるんじゃないのか?」

 目標の果てをどうするかは
 自分次第だ、と王は語る。