Chapter03-04

記録者: シャルティオ (ENo. 14)
Version: 1 | 確定日時: 2026-01-04 04:00:00

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女はじっとあなたの言葉を聞いて、それで、
ふ、と何かを思ったようにあなたに視線を向ける。

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「……あのさ。
 誰かのために生きるって、なんか難しいと思わない?」

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「ああごめん、急にさ。でも……ウチ思うんだよね。
 期待されて、期待に応えようと頑張るじゃん?
 勿論そりゃ、応えるのって義務じゃないけど……出来れば応えたい、じゃん?」

自分の指先でもてあそぶ髪の毛が、ゆるく揺れる。
その指先は、癖のように、逃げ道のように、同じ束を何度も撫でていた。

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「誰かのために頑張るのって、嫌いじゃないんだよ。
 でもさ、その“誰かに似合う自分”を続けなきゃいけないのが、ちょっと怖い」

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「ウチ、そんな器用じゃないし。
 似合う自分のサイズ、毎回ぴったりじゃないんだよね。

女はくすっと笑う。
その笑いは軽いのに、どこか無理に持ち上げた声色だった。

そして、あなたを少し覗き込む。

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「クロは、自分の価値ってどこに置いてる?
 ……他人をどれだけ、自分の価値に使ってる?


──あなたは、自分の価値に他人の評価をどれだけ使っていますか?

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「“誰かのために”動こうとするとさ、
 結局ウチ、自分がしんどくなっちゃうんだよ。
 都合よく使われてる感じ、というか……」

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「でも逆に、全部“自分のため”だけにすると、
 それはそれで空っぽになるんだよね。
 なんかこう……味のしないガムを噛んでる感じ」

だから、と言いかけた口を噤む。
ちょうどいい言葉を探す様に視線が白い天井を揺れて、
ああ、と小さな声を零して、ようやくあなたに視線が戻った。

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「……誰かのために頑張るのって、
 “その人に向けた”自分の“好き”って感情なのかもな」

それで、少し照れくさそうに笑う。

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「ウチは、その“好き”が続けられるかが自分にとって大事……だと思う。
 相手が好きって事……じゃなくて、好きって感情を持てる自分のほう。
 “好きを与えられる自分”、が一番価値がある、と思う……のかな」

うまくまとまらないや、なんて苦笑気味に言った後、
息を細く吐き、椅子にもたれ直す。

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「……ま、そんなに上手くいかないんだけどね、現実は」

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「…………あぁ、難しいね」
「しかも私には、“王”という
 立場があるからね…………」

 頷く。
 自分には、重荷があるから。

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「…………お前は無理しなくても良い。
 私のように立場がある人間とは、
 違うのだろう?」

 声に気遣いの色が混ざった。

 そして投げられた次のトイカケ。
 これは、あぁ、痛いな。

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「私は……王だから」
「誰かに望まれないと……意味がない、価値がない」

 声。少し震えている。

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「私欲に走る王なんて……暴君も同じだ。
 私はそんな風にはなりたくない、のさ」

 息をする。

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「私の価値は他人にある。
 他人から、民から、臣下から
 “価値がない”と断じられたのならば」
「…………それは、すなわち」

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この私に…………
 シャルティオ王に価値がないも、同義

 望まれない存在に、王である必要なんてあるのか?
 民が臣下が望むからこそ、期待を背負わせるからこそ、
 少年は“王”で在れるんだ。

 だって従者キィランも、言ったじゃないか。
 “王ではないただのシャルティオ”に、価値を見出していないと。

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「私は……私は…………王だから」

 心の何処かが痛むのは、どうしてなんだろう、な。