Chapter03-03

記録者: シャルティオ (ENo. 14)
Version: 1 | 確定日時: 2026-01-04 04:00:00

クリックで開閉
icon
「……そっか」

一言だけをぽつりと落とし、その後の言葉を探すように目が泳ぐ。
何かを言えば軽くなってしまうし、黙れば重くなる。
その中間を彷徨うような視線の動きだった。

icon
「いや、なんかあんま気の利いた事言えないや。
 テキトーな相槌を簡単に言うのは失礼っていうかさ……」

女は椅子にもたれかかり、髪を指で弄りながらぼやくように言葉を零す。
……指先で“間”を誤魔化しているようだった。

icon
「……じゃあ、さ、クロ。
 クロって誰かに期待されたりすることって、ある?」

icon
……誰かに期待されてるって思うの、疲れない?


──あなたは、“期待”に対してどのような感情を抱きますか?


sample

icon
「ウチさ、親とか先生とか、あと周りの人とか……
 期待されるとさ、なんかこう……自分のペースで動けなくなる気がして」

icon
「でもさ、期待されるのって悪いことじゃないのも分かるんだよね。
 褒められたり、認められるのって、ちょっと嬉しいし……」

言葉はゆっくりと紡がれていくなか、指先だけが落ち着きなく動く。
笑っているような、笑っていないような声だった。

icon
「けど、期待ってさ、“応えられなかった時の怖さ”までセット販売なんだよね。
 おまけに“努力不足に見られちゃうリスク”付き」

icon
「嬉しいのに疲れる。
 ありがたいのになんか苦い。
 クロはそういうの、ない?」

Answer
icon
「まぁ…………あの話は重かったし。
 気にしなくても構わない」

 肩を竦める。
 親に愛されるだとか、そんな話をした。

 続く問いに、視線、逸らして俯いた。
 身に覚えがあり過ぎる。

icon
「……私は王だ。
 “王”としての返答ならば、
 それには否を返すべきなのだろう、が」

icon
「…………いや、違うか。
 迷わない王は、それはそれで危険だ」

 ぶつぶつ呟いて、顔を上げた。

icon
「…………まぁ正直、疲れる、よ。
 私は王だからね、責任もとても重い」

icon
「私の成している改革は
 一部の民の望みからはかけ離れているし」
「私が救おうとした人々から、
 刃を向けられたこともあったし」

 その右腕に、力は入らない。
 改革の裏で哭く声に耳を傾けなかった、罰だ。

icon
「…………本当は、いつも怯えている、迷っている。
 怯えて迷っては自問自答している。
 自分の成すことと、その意味について」

icon
「誰もを救える訳じゃない。
 救う民は必然的に、
 こちらが選ぶことになる」

icon
「なればこそ。
 そこから零れ落ちた人々に、
 私が憎まれても仕方ない」

 心に灼き付いて離れない光景がある。
 幼い子供の憎悪の言葉、その無惨な死に様が。

icon
「……疲れるし、重いし、苦しいさ。
 けれど私は王だから、
 どうしてもそれを投げ捨てられない」

 “シャルティオが王だからこそ”、
 託した人々の存在を知っている。
 自分じゃなきゃ、ダメなんだ。

icon
「…………それでも、やらなきゃ」

 “自分しかいないから”その感覚は。
 いつか対峙した魔局長と、同じものだった。