すっかり慣れた白い部屋。少しいつもと違う空気を感じて首を傾げる。
そのままイスに腰掛けて、向かいに現れた人影に声を上げて驚くだろう。

「うわっ、びっくりした! あ、これが黒いとか、はっきり見えないとか、そういうこと?」

「あっ、もし驚かせたらごめんね? 俺の方からキミの姿も声もはっきり見えないし聞こえないから、めっちゃびっくりしちゃってさ」

「あ、俺はダミアンっていうんだ。よろしくね。君の名前も聞きたいけど、聞こえるかなぁ?」
こちらに響いてきたのはノイズ混じりの返答かも知れない。
聞き分けることが出来ないだろうそれに困った表情をうかべて、言葉を続ける。

「うーん、やっぱりはっきりは聞こえないな。ごめんね、もしもう会ってて知ってる子だったら。」
ペコっと深く頭を下げるだろう。そしてすぐ顔を上げて考える。

「なるほど、こっち側だから今度は俺が聞いて良いのかぁ。何が良いかな? 」

「うーん、意外といざ聞きたいこと考えるのって難しいねぇ。じゃあ、軽いやつにしよう」

「キミの好きな食べ物教えて?」

「もしかしたら、俺のとこには無いものかも知れないから、形とか匂いとか味とかも教えてくれたらうれしいな」
もし、そこに行けたら俺も食べてみたーい! と楽しそうに笑うだろう。

「……何だか前回と様子が違う……」
あなたが椅子に座り話しかけた時、魔女の弟子は一人そんな言葉を零していた。
きっと今までのあなたと同じように、回答側からは質問側がしっかり見えているのだろう。

「ダミアンさん、ですね。
前にもお名前をお伺いしたような気はします。
確か魔法使いさんだとか……。
今回は僕からははっきり見えますし……
そうですね、あなたが問う側なのでしょうね」
やや緊張した面持ちで息を吐き、背筋を正しては
回答者として質問を待ち………………、
あ、そういう質問?と少し肩の力が抜けたのだろう。

「僕の好きな食べ物……ですか。
基本的に好き嫌いはしないんですが、そうですね……」

「たまに師匠が作ってくれる魚のパイ……ですかね?
見た目は少しイカついんですけれども、
食べてみるとほろっとした白身魚が入っていて……優しい味がするんですよ」

「さんざん振り回されて僕がヘトヘトになった時ぐらいにしか
作ってもらえないんですがね……」
空腹というスパイスをふんだんに利用されている気もしますが、なんて
あなたに合わせるみたいに軽く笑っていた。