いつもの白い部屋に訪れる。不思議と今までとは違う空気に首をひねりながらも当たり前のように腰を下ろし、向かいに現れたノイズに思わず夕日色の瞳を見張った。
しかしその驚きは一瞬、すぐにゆるくほほ笑みを浮かべる。

「今度は私が尋ねる番なのね。うれしいわ。聞きたいことがたくさんあったから」

「でも、残念なことにこちらだとそちらの顔が見えないのね。」

「もしまだ会ったことのないあなたのために名乗っておくわ。私はミラ・ステラウィッシュというの。よろしくね。ルアルという街で水煙草カフェを営んでいるわ」
一度そこで口をつぐむだろう。あなたが名前を名乗るのを待っているようでもあり、答えないのであれば気に留めずそのまま問いかけへと移っていく。

「みんなに聞きたい質問をするわ。あなたの好きな香りはある? 特にどんな香りが好きかしら?」
広げた両手から白煙があがり、それがいちごやりんご、花、お菓子など、様々な形を作っては消えていくだろう。

「私のカフェは水煙草を扱っているから、フレーバーの参考にさせてほしいの。」

「ミラ?……さん?」
あなたから挙げられた名前を復唱し、
それからあなたの姿を確かめるように、女はじっとあなたを見詰めた。

「……もしかして、クロ?
ああ、うん……ウチは……、……すみ。
灰川すみ」
あなたの姿に既視感があったのだろう、
ややたどたどしく名乗り返した後に、次いだ問いについて少し考える。

「香り……。好きな香り、か。
あんまり考えた事は無い、けれど……」

「石鹸とかミントとかシトラスの香りとか、
あんまり甘すぎないさっぱりした奴……かな。
……でもこういうのってもう水煙草にありそう……」
それからううん、と少し考える仕草をして首を傾けた。
何か珍しい匂いとかが出せないかとひねり出そうとした……末。

「……新車の匂いとか……?」
自信なさそうな変な回答が出て来た。