あなたの答えを聞いたあと、
墓守はしばらく何も言わなかった。
白い部屋の静けさが、
ほんの少しだけ深くなる。
揺れながらも消えない蒼い灯は、
まるで夜が呼吸しているようだった。

「“続き”をどう思うかは、
きっと君がどれだけ死を近くで見てきたかにも
関係している」
最初の、距離の話とも繋がるだろうねと添えて、言葉を続ける。

「死は、概念のままでいるうちは扱いやすいものだろう。
言葉に出来るし、考えとして整理する事も出来る」
カラン。
けれど、と前置くように、
カンテラがと小さく鳴る。

「それが“自分の傍”に立った瞬間──
死は、途端に重さを持つ」
夜色の瞳が、ゆっくりとあなたを見上げる。

「君は──死を、見つめた事があるかい?」

「遠くの概念としてじゃなく、
自分や、誰かのすぐそばにあるものとして」
──あなたは死を見つめた事がありますか?

「死というものは、
考えるより先に“触れてしまう”事がある」

「誰かを失った時。自分の命がほどけかけた時。
眠りと目覚めの境目で、これはもう戻れないのではないか、と感じた夜」

「そういう瞬間にね、
死は概念でも物語でもなくなる。
そうして死を直視する──それが、見つめるという事だ」
墓守はそこで言葉を切り、
逃げ道を用意するように、穏やかに続けた。

「嗚呼、勿論。思い出したくないなら、
無理に答えなくてもいいよ」