Chapter01-01

記録者: Phanu (ENo. 30)
Version: 1 | 確定日時: 2025-12-28 04:00:00

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あなたがふと気が付けば、真っ白な部屋に居た。
そこには椅子がひとつ置いてあるだけで、他に何もない。

あなたがその椅子に、座ったとき
あなたは視界の“先”に、誰かがいることに気が付いた。
白い部屋のなか、白い椅子に誰かが、座っていた。


  ──カシャ


何かが擦れるような、もしくは閉じるような音。
その音は対面の椅子から聴こえてくる。

それは────人物と解釈は出来はするだろう。

腕が二本あり、脚が二本ある。
それなりに体格の良さそうな身体に──無機質な四角いかたちが、乗っている。
あなたにその知識があるならば、それはカメラのように見えるだろう。
艶やかなレンズがじっとあなたを見詰めるように据えられていた。


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「……」


……そうしてその状態のまま、暫く。
沈黙に耐えかねてか、将又訝しんでか、あなたが口を開こうとした時、
もしくは、十分すぎる時間が経った後に、声がする。

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「……あなたは私を観測可能ですか?」

男性的な声だ。決して被り物の様にくぐもった声はせず、妙に鮮明な音色。
どこか奇妙な言い回しの後、まるで咳払いをするように、
人であれば口元に当たるだろう所に軽く手を添えて、
それから改まって一つ礼をした。

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「先ほどは不躾に見つめてしまい申し訳ありません。
 状況を把握するため暫し観察を行っておりました」

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「当機は此の場所について説明をすることが不可能です。
 この部屋についての事前情報はインストールされておりません。
 再起動した時にはこの部屋に在りました」


……即ち、この者もまたこの部屋に居る理由を知らないという事だろう。
彼方もまた、この部屋に呼ばれた者の一人……ひとつであるようだ。
現状を確認するようにレンズを左右に向けたソレは、しまいには改まってあなたにレンズを向け直す。
ピントを合わせるようにレンズがくるりと回り、それから頷くように一つ頭を揺らした。

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「観察対象、まずはあなたという存在を記録するための
 初期照合を致します」

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「あなたの識別情報を教えてください。──名前、呼称、あるいはそう呼ばれる理由を」

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「あなたを“あなた”と定義する特徴を」




──あなたは得体の知れない観察者に、どのような自己紹介をしますか?


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「──失礼致しました。まずは当機から情報を開示すべきでしたね」

きゅり、とレンズがまた周り、一拍の間。
まくしたてる事は不信感や警戒を生む事を
判っているからこその故意の間であった。

──あなたは回答せずとも良いのだろう。
コレはあなたを観察対象と認めたようだが、
観察される事を万人が受け入れる訳も無いのだから。



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「当機はAster Visual Automataシリーズのβライン第9号機。
 即ちAVA-β09、通称Observerオブザーバーと申します。」

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「Asterismは情報観測機器を製造する企業ですが、
 中でもAVAシリーズは主に長期観測任務に使用される自律稼働式人形です。
 当機はその中の一つで御座います」


そこまで説明をして、あなたの顔を窺う。
どうも中々ピントが合わない様子で、暫くレンズを回した後。
考えているかのようにまた手をレンズの傍に沿えていた。
して、数拍。

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「…………。」

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「即ち、オートマタと呼ばれる機械式人形のひとつで御座います。
 その中でも、観察・観測を目的として製造されたものです。以後何卒お聞き見知り」


説明が難しかったろうと解釈したらしい。
其処まで告げ、改めて頭部を深々と下げた。──さて、あなたの番だ。
Answer
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「おやまァ、これは驚きましたね~」

夢とも分からぬ見知らぬ部屋で、そこにあった椅子に座って見れば
気付けばそこには知らないモノ。
姿を見て魔物の類かと思ったがどうも魔核の気配を感じない以上、
違う理の上の存在なのだろう。

ゆうらゆらと尻尾を揺らし、機械頭へとニコニコと袖を振った。
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「見えてますよ~、
 あなたの頭が何だか四角い変なモノなのが正しいなら
 正確に見えていると思いますぅ~!」

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「なんだかわからないですけどぉ~……
 あなたも此処の事は何も分からないんですね!
 じゃあ私たちお揃いですねぇ~、分からない同士よろしくお願いしますぅ~」

それで、次いで機械頭──オブザーバーが繰り出して来た問いに、
ふうむ、と此方は頭をひねった。
恐らく別の世界線の存在だろう相手に、どう答えたものかは悩ましい。
他の世界での常識など知らないものだから、どこまで答えればいいのか皆目見当がつかない。
なんせ相手の言うキカイシキニンギョウとかいうのが全く見当がつかないのだ。
どこからどこまで通じるか、どうにも考えようがない。
……そもそもどこまで回答すべきかなども、中々。考えてみえばキリがない。

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「そ~……うですねぇ~……」

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「私はファヌと申しますぅ~、
 魔物なんですけどぉ~、魔物って分かりますぅ?」

ゆるい確認を挟み、オブザーバーが特に疑を呈さないのを見て言葉を続ける。

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「スケルトンドッグって知ってますぅ~?
 名前通りの骸骨犬なんですけどもぉ、アレの上位種みたいな
 そぉいう種族の魔物なんですよぉ~」


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「しかし人形となると私も祝福が出来ないですねぇ~、残念ですぅ。
 僭越ながら私は死霊術師なもので!
 命という概念を持たない者にはあんまり興味が湧かないんですよねぇ~」

とはやや冗談めかして言い足して、
後はオブザーバーの反応を待つのだ。