
「…………」
自分が何者か何て分かっている。
自分は選ばれた器で、次の器が現れるまでの命に過ぎない。その中でひたすらに生きるちっぽけな存在だ。
それ以上の事は未だに見当たらない。
誰かの物語を見守り、記憶の中に綴り、表舞台には出れない裏方のような人物。語り部として居るけれど、己が『登場人物』として語られる事は無い。
そうやって自分の周りは誰かの物語で埋め尽くされている。
自分の物語は途中から黒インクをぶち撒けられて書けなくなってしまった。
そこからもう書く事を止めてしまった。

「僕は通り過ぎる風」
「いつか人の記憶から消える存在」
「………祝福という呪いを納める器だよ」
レンズが消えた後に静かに答えた。