Chapter05-fin

記録者: 神辺野 令人 (ENo. 121)
Version: 1 | 確定日時: 2025-12-24 04:00:00

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あなたの言葉が空間に染み込むように静かに落ちていく。
吸血鬼はそれを逃さず掬い上げ、ゆるく微笑む。

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「ええ。とても“あなたらしい答え”だわ」

白い部屋の境界がふっと揺らぐ。
輪郭が削れ、床と壁の境目が淡く溶け合っていく。
まるで視界が曇るように、世界そのものが退いていく。

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「愛はね、いつだって“行き先”を自分で決められるものじゃないわ。
 でも──あなたがどこを望むかで、
 その結末に“どんな色をつけるか”は変わっていくわ」

彼女の輪郭もわずかにぼやけてみえてくる。
けれど、その赤い瞳だけは最後まで揺るがずあなたを見ていた。

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「……ええ。これで終わり。
 “今回のあなた”と話すのは、これが最後ね」

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「此処での話なんて忘れてしまっても構わないわ。
 でもいつかあなたの“愛の答え”が変わったとき、また聞かせて?」

部屋はほとんど形を失い、
あとに残るのは薄い光と、彼女の声だけ。

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「さあ、戻りなさい。
 あなたの現実へ──あなたの愛が続く場所へ」


世界が静かに途切れる。
まばたきの合間に、白が完全に消え──
あなたは夢のように白の水面からゆっくりと浮上していった。

ここトイカケはありません。回想や感想を自由に記入したりしなかったりしてください。
Answer
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「ええ。あなたの行き先も、より良い場所だといいのですが」

 愛が続く場所、と言ったか。
 “愛”には不自由さが伴うものだ。そう語った彼女が、まだ封印され縛り付けられ続けているということは、彼女の“愛”はまだ有効であり生き続けているのだろう。
 伝承でうたわれるところの吸血鬼という存在は、しばしば長い寿命を持つとされるが──しばしば見られるフィクションと同様に、愛する相手が人間だとしたら。その相手は、もう生きていない可能性もある。
 向ける対象の存在が、すでにこの世にない場合、“それ”は愛であり続けられるのだろうか?

 ──これは復讐だ。愛などではない。
 もし、ここに何かがあるとしたら、それは。執着と呼ばれるもの、ただそれのみである。