Chapter05-02

記録者: 神辺野 令人 (ENo. 121)
Version: 1 | 確定日時: 2025-12-24 04:00:00

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「私はね……愛って、とても厄介で、
 でもどうしようもなく惹かれるものだと思うの。
 血みたいに温かくて、時間みたいに残酷で、
 それでいて、どんな者でも変えてしまう」

あなたの言葉を聞いて、吸血鬼はぽつりと自身の考えを零す。

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「あなたの言う事はきっと正しくて、
 それでいて間違っているのでしょう。

 明日のあなたに訊いたら、5年後のあなたに訊いたら、
 5年前のあなたに訊いたら──きっと違う答えが来るの。
 愛ってきっと、それだけ不確かな事だわ」

彼女は細い足を組み替え、椅子の背に体を預ける。
真っ白な部屋の中で、その赤い瞳だけが深い影を帯びていた。

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「そう思わない?」

軽く首を傾げて笑うと、その笑みはころころと転がるように形を変える。
無邪気にも見えて、どこか深い絶望すら含んでいるような、不思議な笑み。

やがて吸血鬼は小さく手を合わせ、軽い音を鳴らした。
その一拍で、空気がまた別の問いへと向きを変える。

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「さ、次の問いに行きましょう?
 あなたは──愛に伴う不自由さについて、どう思う?

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「縛られる側としてでも──縛る側としてでも、
 どちらでもいいわ。少し考えてみて?」


──あなたは愛によって自由が縛られる事についてどう思いますか?
Answer
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「先ほど申し上げたように、我々にとっての愛とは、主によってなされた行為、あるいはそれを受け取った我々が、それを隣人に与える行為、その際、二者の間でそれが移動する、その動きに名付けられたものです。
 ある“もの”が、ただ動いただけです。そこに、彼らの自由を阻害する何物かが、はたしてあるでしょうか?」

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「しかし、あなたはそうではない、と。
 先ほどあなた自身が仰った、『封印されていて、外に出ることができない』という状況と、その言とを照らし合わせて考えると、あなたは愛に縛られている、ということでしょうか」

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「愛に縛られる吸血鬼など、私の世界では──いえ、よく聞く概念でしたね。
 大衆向けの娯楽作品、特に恋愛を扱ったものに、ごまんとありました」

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「人間は、『自分を愛する、見目麗しい吸血鬼』のことが大好きなようです。
 あなたのその姿も、誰かの願望の表象でしょうか?」