Chapter06-01

記録者: 薄場心檻 (ENo. 146)
Version: 1 | 確定日時: 2025-12-24 04:00:00

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あなたがふと気が付けば、真っ白な部屋に居た。
そこには椅子がひとつ置いてあるだけで、他に何もない。

相も変わらない様子の白い部屋には
いつも通り椅子が一つだけ。
座らずとも、答えずとも、あなたが望めば元の場所には戻れよう。
もし座るのならいつも通り──壁が開けて、〝向こう側〟に姿がひとつ。

そこにいるのは──人型ではあったが、どこか人らしくないものだった。
白い部屋の中、静かに座っているその姿は真っ黒な影法師のよう。
人では無く、どこか──夜そのものがそこに居るような、そう思わせる姿であった。

奇妙なものではあるが、それはきっとあなたを恐れさせるものではなく、
どこか安心感のあるものに感じられるのかもしれない。

夜空に月が浮かぶように真っ白な顔、
あなたの事をじっと見据えるひとみは夜の色。
驚く様子も慌てる様子も無く、そこに静かに在った。

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「やあ。いい夜だね」

中性的な声は響かず静かなもの。
あなたの言葉を待つように暫くじっとあなたを見詰めた後に、
ややわざとらしく、人間を模すように首を傾げる。
今までの問い人と同様、あまりあなたの事を正確に認識出来ていないのだろう。

とはいえ、ソレにとってその事はさして問題ではないらしい、
様子を窺った後、まっくろな口を開く。

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「コレはどうやら君に問い掛けるために呼ばれたらしい。
 ──ひとまずコレの事は『墓守はかもり』と呼んでくれればいいよ。
 本来は眠りたい子を眠らせるためのものなのだけどね」

コレ、というのは恐らく一人称であるのだろう。
墓守を名乗ったその影は、区切るようにカランと音を鳴らす。
手に持った銀色のカンテラの音のようだった。
枯木の意匠のカンテラに、青い光が点っている。

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君にとって死は、どれぐらい遠いものだろう?

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「ずっと遠くの終着点にあるものだろうか。
 いつでも首筋に感じるものだろうか。
 それとも、毎夜のように訪れるものだろうか」


──あなたにとって死とはどれぐらい遠いものですか?
Answer
再び訪れた白い部屋。一度見回して変わりがないのを見て取り、それしかないのだと椅子に腰を下ろしただろう。
向かいに現れた夜が人の形をしたような姿に少し驚いて目をパチパチさせて、挨拶を聞いた。

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「あ、うん、こんばんは?」

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「墓守さん、ってなんかそれ、ガイドさんとか先生、とかそういうのと一緒ってこと? それじゃつまんないなぁ、ヨルさんって呼んで良い?」

提言しつつ、否定も肯定も返ってこないところから、勝手に許可を得たと思うことにしたようだ。
墓守が揺らすカンテラを一瞥して、視線を再び夜色の瞳へ戻して首を傾げる。

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「死、また難しそうだねぇ。わかんないなー」

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「うち、生きてる実感みたいなのもちょっと薄いから、すっごい近い気もする。いつでも首筋にってわけじゃないけど、すーって溶けて消えていきそうな感じっていうか?」

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「でも別に、死にそう、って切迫? してる感じでもないかなー。ここもまた帰っていつもの日常に帰れるって思ってるし」

ひらりふわりと、浮かんでいるような軽やかさで答えただろう。