
「……ん? なんか、良くなかった? やっぱり死んだあとみんな幸せに、とか変? いい人も悪い人も報われちゃったらずるいかな?」
肯定も否定もない沈黙に耐えかねて、オロオロと沈黙を埋めようと言葉を並べただろう。
ゆっくりとした呼吸で墓守が口を開いたのに、ホッとして答える。

「そうだねぇ、なんだかんだ、まだ遠いものなのかも。死って」
そう言ってしまって、問いかけより先走ってしまったようだと気付いて口をつぐみ、墓守が語る言葉に耳を傾けているだろう。
時折視線を宙に浮かせて、過去を振り返るように見つめていたが、墓守の言いたいことを全て聞き終えたところで口を開く。

「うーん、いや、なんていうか、死って言う現象と、死って言う概念が人と結びついてないのかなぁ?」

「俺んち農家だからさ、羊がいるんだ。世話してミルク貰ったり、毛皮を貰ったり。だから、羊が生まれるところも、死ぬところも何回も見てきたよ」

「でも、羊って俺にとって生まれたときからずっとそうだったから、そういうものだったんだ。生まれて、世話して、色々もらって、最後は死ぬって、そういうもの」

「死んじゃうとちょっとは悲しいけど、一緒にいる間のどっかでずーっと、その最後を知ってんだ。だから、それはそういうもの、って思ってる」

「でも、多分、今一緒にいるフィルーが死んだら、ショックでしばらく立ち直れないと思う。友達とか爺ちゃん婆ちゃんでもそう。同じ死なのに、全然違う気がする」

「ちょっと羊たちには悪いけど、比べて、違うなって思っちゃうね。うーん、いつかは人の方も経験するんだろうけどな。やっぱりちょっとそれは怖いなぁ」
困ったように微笑んで頬を掻くだろう。