墓守は、フェルヴァリオの返答にゆっくりうなずいた。

「──答えてくれて、ありがとう」
死に向けられた礼なのか。
あるいは、ここまで沈黙を共有したことへの礼なのか。
どちらとも取れたが、墓守はそれ以上踏み込まない。
夜の風が、青い灯を揺らしカラン、と音が鳴る。

「コレはね、眠りたい子には眠りを与えるものなんだ。望まれた分だけ、応えるだけのモノに過ぎない」
淡く脈打つ灯が、心臓の鼓動のように上下する。

「……最後のトイカケにしよう。
もし終わりを選べるとしたら──
君は、どんなふうに終わりたい?」

「静かな眠りか。誰かの手を握ったままか。役目を果たした後か。それとも……まだ足りないと、抗う終わりか」

「どれが正しいとか、立派だとか、コレは言わないよ。ただ、それが“君の望み”である事だけが大事なんだ」

「どんな終わりを望んでいる?」
⸻
フェルヴァリオは、肩を震わせた。
焰を弄んでいた指先すら、冷えていた。

「……とりあえず今は、温まりたい。寒すぎる」
返答はひどく現実的で、逆に生々しかった。

「答えは保留にしたい。
まだ自分に続きがあると思ってるから
明日も仕事があるし。依頼は来るし」
火を増やしながら、ぽつぽつと言葉が落ちた。
そこで、ふっと声がゆるむ。

「もしオレが死んだら──
白い花を添えて、明るく歌ってくれたらいい」
視線が墓守から離れて、どこか遠い未来へ向く。

「未来でまた逢おうってね……?」
フェルヴァリオは鞄をガサゴソ漁りはじめる。
凍りつく指で、クッキーらしい包みを取り出す。
寒い夜に食べれば、少しは力になる。
終わりよりも、今生きるほうが優先だった。