Chapter06-fin

記録者: フェルヴァリオ (ENo. 64)
Version: 1 | 確定日時: 2025-12-24 04:00:00

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墓守は、何も言わずにただそこに在った。

評価も、肯定も、否定もない。
夜がそこにあるように、墓守は静かに佇んでいる。

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「……うん」

それ以上の言葉は無かった。
意味を持たない、ただ“聞いた”という気配だけが残る。

カラン。
カンテラが鳴り、青い灯が少しだけ強まる。

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「もう十分だ。
 今夜は、ここまでにしよう」

青い光がゆっくりと広がり、
白い部屋の輪郭をやさしく滲ませていく。
壁も、床も、天井も──境目を失い、夜に溶けていく。

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夜が来る 夜が来る──♪

墓守は小さく歌うように零して、そっとカンテラを傾けた。

灯の中から、夜が零れる。
それは冷たくもなく、重くもなく、
まぶたの裏に静かに降り積もるような闇だった。

意識が、ゆるやかに沈んでいく。
問いも、言葉も、白い部屋も、
すべてが遠ざかっていく。

最後に聞こえたのは、穏やかな声。

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「君に、良い眠りがあるといいね」


カラン。

その音を境に、
あなたは深い眠りへと落ちていく。

——そして瞼を開いた時、
そこはもう、元の世界だ。

ここトイカケはありません。回想や感想を自由に記入したりしなかったりしてください。
Answer
 墓守は、ただそこに佇んでいた。
 感想も、判断も寄越さない。
 拒絶ではなく、介入しない優しさのようだった。

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「……うん」

 たった1語だけが落ちる。
 意味も、続きも与えられない。

 カラン。

 カンテラが鳴る。
 青い灯がひときわ強く脈を打つ。

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「もう、十分だ。今夜はここまでにしよう」

 墓守は、まるで自分に唱えるようにゆっくりと歌う声で続けた。

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「夜がくる、夜がくる──♪」


 カンテラが傾けられる。
 灯のふちから黒い夜がこぼれ落ち……。
 冷たくも、重くもなく、ただ休息の形だけしていた。

 最後に降りかかった声は、ひどく柔らかい。

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「君に、良い眠りがあるといいね」

 カラン。

 あの音を境に、フェルヴァリオは深く沈んでいく。
 夜ごとに、火が消えるように。



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寒ッッッ!! あれは死だ!! 
     寒い!! 温めなきゃ!!」


 体温を奪われた感覚がまだ身体に残っている。
 フェルヴァリオは半ば反射で布団を蹴飛ばし、周囲を見る。

 見慣れた工房の寝室。
 白い部屋も、カンテラもない。

 まずするのは、今日の依頼のチェック。
 淡々とタスクを確認し⸻

 階段をガッ、ガッと降りて厨房へ。

 鍋に水。ぼっ、と火をともす。
 死ではなく生きている火だ。

 窓も確認する。
 まだ冬は来ていない。
 霜は降りていない。

 ただの朝。
 ただのルーチン。

 それだけで、今は十分だ。